こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ビッチ・スラップ 危険な天使たち

otello2010-09-18

ビッチ・スラップ 危険な天使たち Bitch Slap

ポイント ★★★
監督 リック・ジェイコブソン
出演 ジュリア・ヴォス/エリン・カミングス/アメリカ・オリヴォ
ナンバー 222
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


過剰にセクシーで過激にバイオレント。3人の美女が胸の谷間を強調し脚線美を誇らしげにさらす。圧倒的な女性上位の世界、男は添え物に過ぎず次々と現れては彼女たちに蹴散らされていく。クールで知的な女、ワイルドで凶暴な女、エロティックに媚態を振りまく女。それぞれの思惑と魂胆が荒涼とした砂漠で交差し、駆け引きと取り引き、陰謀と裏切りを繰り返していく展開は、ざらついた感じの映像と大仰な音楽を含めて現代にマカロニウエスタンをリ・イマジネーションさせているかのよう。荒っぽいがユニーク、安っぽいがエキサイティング、映画はそんな汗臭い牝の体臭を強烈に放つ。しかし、それは決して不快なものではない。


ヘル、カメロ、トリクシーの3人はギャングの幹部を拉致してダイヤを埋めた場所を聞きだそうとするが、カメロが射殺してしまう。しかも殺した男が暗黒街の伝説のボス・ピンキーの部下だったことから、3人の間にも疑心暗鬼が生まれ始める。


穴を掘る過程で、事の発端と3人の過去が明らかになっていくのだが、そこでも物語のリアリティよりも3人の女の弾ける肉体のリアリティばかりが追い求められる。ストリッパーのトリクシーはちょっとヌケたように振る舞いつつ時に大胆なポーズで男を悩殺し、カメロは荒くれ男たちを容赦なくぶちのめし、ヘルは常に冷静さを失わない。この3人がふざけて水浴びをするシーンはスローモーションになって、そのはちきれそうなバストを誇示する。ヌードは一切ないのにもかかわらず妙に男心をそそる、そのバカげた演出を最後まで貫くところが非常に心地よい。


◆以下 結末に触れています◆


やがてこの計画の首謀者であるヘルが徐々に正体を現すにつれ、3人は些細な言いあいから仲たがいを始め、挙句にヘルとカメロは全面衝突する。拳と拳、脚と脚をぶつけ合い、くんずほぐれつ泥だらけになりながら相手の股ぐらに噛みついたりまでする。女同士が必死の形相で喧嘩をする姿はむしろユーモアすら漂い、とってつけたようなどんでん返しすら許せてしまうほど不思議な魅力を放つ作品だった。