こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パンドラム

otello2010-10-04

パンドラム Pandorum


ポイント ★★
監督 クリスチャン・アルバート
出演 デニス・クエイド/ベン・フォスター/カム・ジガンデイ/アンチュ・トラウェ/カン・リー
ナンバー 235
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


鉄がきしむ不気味な音、暗い画面と短いカットに時折フラッシュが入り、こけおどしの効果音が神経を逆なでする。断片的な記憶だけで全体像が見えず、状況が理解できないうえに身を守る装備もない。そんな立場に追い込まれた宇宙船の乗組員が目にする信じられないショッキングな光景。映画は情報を小出しにすることで見る者をじらし、危機がさらに危機を招き謎がさらなる謎を呼ぶ展開で興味をつなごうとする。しかしその手法は安手のホラームービー並みの小手先の表現に頼った陳腐なもの。主人公が遭遇する意外な生き物も、彼を待ち受ける衝撃の真実も斬新さとは程遠い。


他惑星への移住民を乗せた宇宙船内。冷凍冬眠から目覚めたバウアー伍長は同じく覚醒したばかりのペイトン中尉の指示で様子がおかしい船内の調査を始める。途中、農業従事者の男や科学者の女といった生存者と出会うが、彼らは多くを語らない。そして、バウアーは武器を持った食人族に襲撃される。


食人族は宇宙船内で独自に進化したのだろう、抜群の身体能力とタフな肉体を持ち斬られても刺されてもなかなか死なず人間を襲っては生肉を貪り食う。バウアーたちは食人族に追われながら原子炉の再起動を試みるが、宇宙船内は広く迷路のように入り組んでいる。物語は彼らのサバイバルを追うのだが、食人属の外見のグロテスクさが強調され、命を狙われる恐怖よりも不潔さ・野蛮さから受ける不快感ばかりが先行する。


◆以下 結末に触れています◆


一方、ペイトンのもとにギャロと名乗る若い乗組員が救助を求めて現れ、ギャロはこの宇宙船の重大な秘密を知っているとほのめかす。その情報をペイトンは探り出そうとするが、結局とんでもない方向に進んでいく。予想もしなかったオチといえばその通りだが、あまりに強引過ぎて白けるばかりだった。せっかく公開直前(9/30)に太陽系外に地球型惑星が発見されたというニュースが発表されたのに、こんな作品を見てしまうと夢がしぼんでしまうではないか。。。