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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ガフールの伝説

otello2010-10-06

ガフールの伝説
LEGEND OF THE GUARDIANS: THE OWLS OF GA'HOOLE

ポイント ★★*
監督 ザック・スナイダー
出演
ナンバー 237
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


風にゆらめく羽毛から瞳の中の毛細血管まで細密に描き込まれた表情の変化は、主人公の感情を雄弁に語る。光のわずかな傾きや強弱、飛行や落下の描写は、想像もつかないスピードとめくるめく体感を味あわせてくれる。まさにCGが生み出すリアルを越えたハイパーリアルな映像は、まるで本物の鳥になったような感覚を見る者にもたらす。映画はフクロウ界に伝わる英雄伝説を題材に、若者が自立し成長していく過程で、友を得て戦争という通過儀礼を経て一人前の戦士となっていく姿を描く。


ソーレンとクラッドのフクロウ兄弟は飛行練習中に覇権を握ろうと企む純血団に拉致される。弱きフクロウたちが奴隷のように働かされているのを知ったソーレンはジルフィーと共に脱走しガフールの神木を目指すが、クラッドは純血団の戦士になる道を選ぶ。


純血団の支配する世界は種族によって身分が分けられた封建的な独裁国。メンフクロウ種が上層階級で、他の種は抑圧に耐えている。一方のガフールはあらゆる種がそれぞれの能力を生かしながら民主的に暮らす平和な王国。この両国がかつて干戈を交え、ガフールの勇者たちの活躍で正義が守られた伝説がフクロウの間に伝わっているのだが、ソーレンは伝説が実話だと知り、自分も戦士に加わりたいと願う。血気にはやる若者が正義感ゆえに命がけの旅に出る、それはいつの時代にも勇ましくも美しい光景だ。


◆以下 結末に触れています◆


兄弟の相克、友情、苦難の旅、師との出会い、そして戦、裏切り、勝利と、ストーリーはあらゆる冒険ファンタジーの鉄則に従って予想通りに展開する。また、ソーレンをはじめ彼を補佐する友人、彼を導く賢人、近親憎悪が生むライバルと、キャラクターの性格も通俗的。それでもこの作品が魅力的なのは、フクロウを主人公にしたことで “鳥の目”という空間を自在に飛び回る視点を得、表現に幅ができ、非常にエキサイティングな映像に仕上がっているからだろう。