こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

インシテミル

otello2010-10-19

インシテミル 7日間のデス・ゲーム

ポイント ★★
監督 中田秀夫
出演 藤原竜也/綾瀬はるか/石原さとみ/阿部力/武田真治/平山あや/石井正則/大野拓朗/片平なぎさ/北大路欣也
ナンバー 249
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


誰もが誰かを殺しうる状況で正常な理性はどこまで保てるか。カネに目がくらんだ者が襲撃してくるかもしれない、退けても犯人にされるかもしれない、閉鎖された空間に閉じ込められた人々が徐々に本性を現していく時、悲劇はさらなる惨劇を呼ぶ。自分だけは生き残ろうとする者、他人を陥れようとする者、胸の内を隠して成り行きを傍観ている者、そして皆で協力して難局を乗り切ろうとする者。映画は非常にテンポよく極限の心理状態に追い込まれた登場人物を通じてミステリーとスリルを味あわせようとするが、ディテールの設定が甘過ぎて彼らの感情に共感できなかった。


時給11万2千円に惹かれて集まった10人の男女。それぞれ事情を抱えているが多くは語らない。彼らは暗鬼館という施設で、凶器と動機を与えられた人間がどういう行動をとるかという実験の被験者として7日間の共同生活を強いられる。


二日目の朝、早速射殺死体が発見され犯人探しが始まるが、犯人は多数決で決めれれるいい加減なもの。そのルールには従わねばならず、怪しげな男が“犯人”にされ隔離される。だがそこで各自の部屋にあった謎の箱に入っている殺人に使える小道具を結城という青年以外は見せようとはせず、たがいに対する疑心暗鬼を隠そうとはしない。それどころか、映画は2人目の被害者が出た犯行を見せるのだ。ゆっくりと良心を失っていくのではなく、元から常軌の逸した人間が混じっている。こうなると緊張感は一気に弛緩し、謎解きの醍醐味はなくなってしまう。


◆以下 結末に触れています◆


結局、死んだ人間はどうやって命を落としたのか一応の答えは提供されるのだが、この実験を陰で操っていた“機構の職員”は己の安全をどのように確保したかは描かれず、またフリーターの結城や元社長がなぜあれほど拳銃の扱いに慣れているのかも不明。もう少し登場人物がどういうバックグラウンドを持っているのかを説明しないと殺しの小道具の意味が見えてこないし、外部に中継されていることも伏線として生きていない。だいたい、実験に入る前に荷物をすべて預けたら7日間ずっと同じ服を着ていなければならないではないか。。。