こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

遠距離恋愛 彼女の決断

otello2010-10-25

遠距離恋愛 彼女の決断 GOING THE DISTANCE


ポイント ★★★
監督 ナネット・バースタイン
出演 ドリュー・バリモア/ジャスティン・ロング/クリスティーナ・アップルゲイト/ロン・リビングストン
ナンバー 254
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


米大陸の両端、しかも3時間の時差がある。そんな距離を乗り越えて愛し合う男女は結ばれるのか。会いたいのにすぐには会えない、電話やメールで語り合ってもどこか物足りない、そして離れている時間が長くなるうちに相手に対する信頼が揺らぎ始め心がすれ違って行く。描かれているのはまったくステレオタイプの「遠恋」物語だが、ところどころにちりばめられたウイットに富んだシチュエーションと、悪趣味になる寸前で歯止めをかけた下ネタのおかげでコミカルかつテンポの良い作品に仕上がっている。ドリュー・バリモア扮する、もう若くないけれど恋にも職探しにも必死になっているヒロインの“イタさ”が危うい魅力を放っていた。


NYのバーで知り合ったギャレットとエリンは映画の話で意気投合、一夜を共にする。その後もデートを重ねお互い「運命の人」と感じるが、エリンは新聞社での6週間の研修期間が終わってサンフランシスコに帰る。


「トップ・ガン」ネタで盛り上がるとアパートの同居人がテーマ曲を流したり、路上で大声でオナニー談義をしたり、NY流のジョークがサンフランシスコのエリンの姉夫婦・友人に通じなかったり、テーブルの上に漏らしたギャレットの体液を食事中の姉が忌避したりと、下品なシーンが頻発する。ところが、ギャレットに扮するジャスティン・ロングのひ弱で都会的な雰囲気と洗練された映像のおかげでむしろユーモラスに見えてくる。また、ふたりが訪れるセントラルパークやコニーアイランド、雑然とした下町の風景がNYの心安らぐ部分を象徴し、この恋の行方を優しく見守る気持ちにさせてくれる。


◆以下 結末に触れています◆


やがてエリンは地元新聞に採用が決まり、「恋」か「仕事」かの二者択一を迫られる。それを機にギャレットも転職するが、結婚するまでにはまだ問題が残っている。それでも、ゴールに向かってかなり前進したふたりを見ていると、「夢は簡単に叶わないからこそ人間は努力と工夫を重ねる」ということを改めて認識させられた。