こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ゴースト もういちど抱きしめたい

otello2010-11-12

ゴースト もういちど抱きしめたい

ポイント ★★
監督 大谷太郎
出演 松嶋菜々子/ソン・スンホン/樹木希林/鈴木砂羽/橋本さとし
ナンバー 258
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


最愛の夫をおいて逝ってしまった心残りが、彼女の霊を現世にとどまらせる。肉体を失って姿を見られずに動き回れるようになると、隠れていたものが見え、知らなかったことが耳に入るようになる。そして恋人に迫る危機…。大ヒットした米映画を男女の役割を逆にしてほぼ忠実に翻案し、愛の強さと切なさを表現するが、細部におけるお手軽さと設定の不自然さばかりが目立つ。トレンディドラマのような出会いからリアリティのない日常、なによりオリジナルを越えようという作り手側の「志」が感じられないのが残念。樹木希林扮するインチキ霊媒師の活躍以外は見るべきところもなく、ただ原作のエッセンスを薄めて甘くしたような出来栄えになってしまった。


会社を経営する七海は陶芸家志望の韓国人・ジュノと恋に落ち、結婚する。幸せな日々を送っていたが、突然ひったくりに襲われて命を落とす。魂だけの存在になった七海はジュノも狙われていると知り、単身調査をするが、魂のままでは手に入れた情報をジュノに伝えられない。


その後、霊媒師を通じてジュノに危険を知らせ、自分を殺した悪党たちの陰謀を暴く展開もトレースする。七海の魂が己の肉体の死に気づかず犯人を追いかけたり、有名な「アンチェインド・メロディ」にのせてふたりがろくろをまわすシーンまで再現するに至っては失笑を漏らしてしまった。元ネタを知らない若い世代の観客ならばテレビドラマ風のわかりやすい演出にも違和感がないかもしれないが、あえてリメイクするなら新たな挑戦が必要なはず。大胆な改変ができなかったのは契約に縛られていたからなのだろうか。


◆以下 結末に触れています◆


結局、何らの新鮮味も覚えないまま物語はクライマックスを迎え、予想通りの結末を迎える。事件直後、警察の事情聴取を受けていたジュノが七海の莫大な財産や生命保険目当てに結婚した上で殺害したのでと疑われるが、こちらの線でストーリーを構築した方がアッと言う驚きに満ちた作品になったのは間違いない。。。