こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

白夜行

otello2010-11-13

白夜行

ポイント ★★★
監督 深川栄洋
出演 堀北真希/高良健吾/船越英一郎/戸田恵子/田中哲司/姜暢雄/緑友利恵/中村久美/粟田麗/今井悠貴/福本史織
ナンバー 265
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


運命を呪い人生を憎んだ少年と少女。少女は過去を消して日向の道を歩むことで、少年は陰から彼女を守ることで世間に復讐しようとする。幼い日に共有した秘密が強固な絆となり、成長してからは正反対の境遇ながら表裏一体になる。彼女は欲しいモノを手に入れるために巧妙かつ陰湿な手段を選び、彼はその手段となって彼女をサポートし続ける。決して他人に胸の内を見せないふたりの孤独。その切なさにも似た悪意が深く静かに映像を支配し、感情を殺したふたりの悲しみを饒舌に物語る。


質屋の店主が他殺体で発見されるが、被疑者が自殺したため真相は闇に葬られる。数年後被害者の息子・亮司は高校生に、被疑者の娘・雪穂は茶道家の養子となってお嬢様高校に通っている。ある日、雪穂の学校のいじめっ子グループのリーダーが性的被害に遭う。


頭脳明晰で人当たりも良い雪穂は己の欲望を次々と実現しするが、邪魔者はいつの間にか排除されている。そこに亮司の影がちらついていても姿は見えない。質屋事件を担当した刑事はふたりに興味を持ちしつこく捜査を続け、すさまじい執念で亮司と雪穂の接点を見つけようとする。雪穂の指令を実行するために亮司は彼女と綿密な打ち合わせをしていたはず。おそらく計画を練っているときがふたりにとって最高のひとときだったに違いない。それはセックス以上の快感と安らぎ、彼らにしか理解できない心の交信。離れている寂しさを打ち消し、生きているのを実感する時間なのだ。映画も原作もふたりの密会は一切描かれないが、そんな想像をさせる展開だ。


◆以下 結末に触れています◆


亮司にとって雪穂は、父親の行為を償い、また自らの達成感を体現するアイコン。雪穂の成功が亮司にとっての喜びでもある。一方で雪穂にとって亮司はどういう存在だったのか。自分を地獄の暮らしから救い、汚れ仕事は引き受けてくれる。だが、真相に迫る刑事の前で、すべての罪をひとりでかぶった亮司を見つめる雪穂の表情から喜怒哀楽は読み取れない。それは、亮司すら雪穂にとって使い捨ての道具に過ぎず、雪穂の「人の心を操る才能」の最初に虜になり永遠の忠誠を誓わされた人間が亮司だったということ。堀北真希扮する雪穂が悪魔のように見えてしまった。