こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1

otello2010-11-22

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1
HARRY POTTER AND THE DEATHLY HALLOWS

ポイント ★★★
監督 デイビッド・イェーツ
出演 ダニエル・ラドクリフ/ルパート・グリント/エマ・ワトソン
ナンバー 278
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


世界を覆う黒い影、襲いかかる死喰い人の群れ。もはや大人は力にはなってくれず、ハリーは自力で難局を切り抜けなければならない。しかも一番の親友とも感情的にもつれ、旅の困難は続く。物語は原作のイメージそのままに、荒涼とした平原や寒々とした海岸、殺伐とした森などの陰鬱な風景の中で彼が追い詰められる映像が繰り返される。青春のきらめきや恋のときめきといった学園生活の甘美な思い出は過去となり、命を狙われているハリーの戦いと謎解きの逃避行は、スリルよりも苦悩、使命感より義務感に追われているよう。ホグワーツという舞台がいかにこの小説を楽しい雰囲気にしていたかが、主人公たちが学校を離れてみればよくわかる。


復活したヴォルデモートは魔法省だけでなくホグワーツも支配下におさめ、ハリーの生けどりを死喰い人たちに命じる。一方ハリーたちはヴォルデモートを倒す手掛かりとなる分霊箱を奪うために魔法省に潜入する。彼らはその他の分霊箱を探す過程で「死の秘宝」の伝説を耳にする。


気持ちを解きほぐすユーモアは影をひそめ、笑えるのはわずかに冒頭で女学生がハリーに変身したときにブラジャーをしたままのシーンと水洗トイレに吸い込まれる場面くらい。プロローグから危機また危機がハリーたち3人組に降りかかり、そのたびにハリーの顔には険が刻まれる。そこからはかつての幼い面影は見事に消え、生き残るために必死になっている男の表情になっている。さらに分霊箱の毒気にあてられたロンは、ハーマイオニーが自分を捨てハリーを選ぶのではという、彼自身が一番恐れていた幻覚まで見る。希望よりも恐怖、信頼よりも嫉妬、最終章はこれまでのシリーズで築きあげた「友情と冒険のファンタジー」という見る者の先入観を完全に打ち砕く。


◆以下 結末に触れています◆


どこに逃げてもヴォルデモートの監視網がかかるハリーたち。魔法使いたちは誰もがヴォルデモートを恐れ、ハリーたちに手を貸す者はいない。そして、ヴォルデモートはさらなるパワーを得る。そんな展開にすっかり絶望的な気分になるが、PART2ではすっきりさせてもらえることを期待したい。。。