こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

クリスマス・ストーリー 

otello2010-11-24

クリスマス・ストーリー Un conte de Noel

ポイント ★★*
監督 アルノー・デプレシャン
出演 カトリーヌ・ドヌーヴ/マチュー・アマルリック/アンヌ・コンシニ
ナンバー 280
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


家族だから憎いのに、家族だから許してしまう。フランスの個人主義の強い伝統のもと人々はみな己の主張をぶつけ合い、相手を嫌っていてもなぜ嫌いなのか伝える。赤の他人ならば二度と顔を合わせる機会もないが、血縁で結ばれていればそんな関係も受け入れざるを得ない。映画はクリスマスを祝うために年老いた両親のもとに集った一族が、おのおの胸の内を吐き出していくというエピソードを重ね、家族の在り方を見つめなおしていく。何を考えているか、どうしたいかはきちんと言葉にするのに、愛や感謝は素直に表現できない登場人物に共感を覚える。


アベルジュノン夫婦の屋敷に成長した子供たちと孫たちが泊りがけでやってくる。そこに長女・エリザベートによって絶縁された次男・アンリが戻ってきたために微妙な空気が流れ始める。アンリは「役立たずな子」として母のジュノンも距離を置いていた。


母や姉とは気まずいアンリはエリザベートの息子・ポールとはウマが合い元気づける。ポールは心に傷を抱えていて、アンリには疎外された者の気持ちがわかるのだ。また、従妹同士で古い屋敷を探検したり、一族の前で芝居を披露したりする。話のわかる叔父さんや従弟との交流、それらのシーンには誰もが子供時代を懐かしむはず。ただ、姉兄弟の従妹・シモンが三男イヴァンの妻・シルヴィアがと寝るが、翌朝そのベッドにイヴァンの息子たちが紅茶を運び、さらにシルヴィアとシモンが同衾しているところをイヴァンは目撃する。その後彼らは何事もなかったように振舞っているが、こういう状況はアリなのかと思わず「?」で頭がいっぱいになった。


◆以下 結末に触れています◆


白血病が発症したジュノンは骨髄移植しか助かる見込みはない。しかし適合するのはアンリとポールのみ。一族のできの悪い2人しかジュノンの命を助けられない運命の皮肉。人間は必ず誰かの役に立つ、そして支え合って生きることが家族に与えられた使命、クリスマスが終わって再び日常に戻ったエリザベートがそれに気づくラストに、限りなく深い家族の絆を感じた。