こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

SPACE BATTLESHIP ヤマト

otello2010-12-04

SPACE BATTLESHIP ヤマト

ポイント ★★
監督 山崎貴
出演 木村拓哉/黒木メイサ/柳葉敏郎/緒形直人/池内博之/マイコ/堤真一/高島礼子/橋爪功/西田敏行/山崎努
ナンバー 287
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


キムタクは何をやってもキムタク、TVドラマや他の映画の役と同じような仕種や表情でヒーローを演じる。もはや古典ともいえる作品の主人公に扮しても、記憶されるのはそのキャラクターではなく“キムタク”の記号。しかも、志願兵として5年ぶりに地球防衛軍に復帰していきなり戦闘部隊の隊長になっても、艦長の命令を無視して軍規を乱しても、ぶち込まれた営倉で酒盛りしても、部下の女性隊員と勤務中にキスしても、それらのツッコミどころはすべて“キムタク”というだけで許されるのだ。この映画では“古代進”の影は薄く、キムタクに人格を完全に乗っ取られてしまっている。


ガミラス星人の攻撃で放射能に汚染された地球に、イスカンダル星からメッセージが届き、沖田艦長以下ヤマトの乗組員は放射能除去装置を手に入れるためにイスカンダルに向けて旅立つ。途中、ガミラス艦隊と何度も交戦するが、沖田の機転と古代の勇気で危機を切り抜ける。


元ネタにオマージュを捧げているのか、ヤマト艦内は昭和の匂いがプンプンする。異常に濃い先輩後輩の関係、ハンドマイクで指示を出す艦長、艦載機や兵器電子機器といったテクノロジー、さらに娯楽室でタバコを吸う乗組員までいて、どう見ても22世紀末が舞台には見えない。だいたい、この時代なら放射能の中和剤ぐらい開発しているだろう。おまけにヤマトの主砲の動きは安っぽいし戦闘機を艦砲射撃で迎撃するシーンもテレビゲームのよう。アニメを見ていた子供の頃なら疑問は持たなかったが、実写になった映像を改めて見ると失笑の連続だ。


◆以下 結末に触れています◆


それでも最後まで見せてしまうのは、キムタクが出ているから。決死の突撃隊を組織してイスカンダルに上陸し、ガミラス星を破壊してもキムタクは無傷。エピローグで、森雪が小さな子どもと一緒に出てくるが、あれはまさか古代の子なのか。つまり仲間を見殺しにして落ち込んでいた森雪を慰めたときに、ついでに作ったのか。いつでもどこでもやりたい放題、そんな無茶もキムタクならばアリと思わせる。やっぱりキムタクはすごいスターだった。。。