こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アイリス -THE LAST-

otello2011-01-11

アイリス -THE LAST-


ポイント ★★
監督 ヤン・ユノ
出演 イ・ビョンホン/キム・テヒ/チョン・ジュノ/キム・スンウ/T.O.P
ナンバー 7
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


日本、ハンガリー、ソウル、上海……世界を股にかけて北朝鮮の暴走をとどめようとする韓国のスパイ。愛を失い裏切りの果てに体も心もズタズタにされながらも、謀略の裏に隠された真実を暴きだそうとする。しかし、次々と繰り広げられる大活劇は、描き方が雑なうえに単調。そこをごまかすために短いカットをつなげているにすぎず、カーチェイスや銃撃戦の見せ方もアイデアに乏しい大味なアクションに終始する。映画は南北朝鮮指導部に深く浸透した極秘組織の陰謀と戦う主人公を通じて、朝鮮半島の平和よりも対立を望む勢力をあぶりだすプロセスを追う。


北の要人をブダペストで暗殺した韓国の工作員・ヒョンジュンは、北のスパイ集団に追い詰められた上、上司にも見捨てられるが、謎の協力者に命を救われる。そこで、“アイリス”という秘密結社を教えられ、構成員の名を記録したUSBとともに北の特殊部隊に接触する。


南北双方に、政権内での自分の立場を強化するために祖国を売る者がいる。利害を同じくする彼らは密かに手を結び、南北首脳会談を妨害するためにソウル市内で核爆発を起こそうとする。その計画を阻止しようとヒョンジュンは闘うわけだが、映画は背景説明をほとんどせず駆け足で場面が展開する。このあたりはTVドラマファン向けのダイジェストのようで構成の粗ばかりが目につく。特にヒョンジュンと彼の恋人・スンヒの関係に顕著。爆殺されたと思っていたスンヒが生きていてヒョンジュンの目の前に現れるが、いくらマスクで口を覆っていても愛した男の目は覚えているはず。それともわざと気付かぬふりをしたのか。また、スンヒは人質となり北のスパイに拷問を受けるが、口を割らないとあっさりと解放される。なぜだ? そもそも、国家の安全保障の根幹を担うNSSの本部があれほど簡単に敵の侵入を許したうえに乗っ取られてもいいものだろうか。


◆以下 結末に触れています◆


唯一、北の敏腕スナイパーを演じたキム・ソヨンが存在感を示していた。洗練された黒ずくめの女戦士、彼女のもっとも北朝鮮らしくない立ち居振る舞いが非常にクールで印象的だった。