こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ソーシャル・ネットワーク

otello2011-01-17

ソーシャル・ネットワーク THE SOCIAL NETWORK

ポイント ★★★
監督 デヴィッド・フィンチャー
出演 ジェシー・アイゼンバーグ/アンドリュー・ガーフィールド/ジャスティン・ティンバーレイク
ナンバー 12
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


「人に雇われるより自分で仕事を作れ」。主人公の不正を告発しようとした双子の学生に、ハーバードの学長はそう言い放って直訴を一蹴する。それどころか、父親のコネを使ってアポを取ったほうがアンフェアと彼らを一喝する。生き馬の目を抜くビジネスの世界、発想や企画を盗まれるようなヘマをする方が悪く、独創的で実行力のある者が勝者となる。まさしく資本主義の競争原理を学生のうちから叩き込む、米国の活力の源を垣間見せるシーンに、この作品のエッセンスが詰まっている。結果を出した者こそが正しいのだ。


ガールフレンドにフラれたマークは、腹いせに女学生比較サイトをわずか数時間でアップし上げ学内の有名人になる。彼の才能に目を付けたウィルクルボス兄弟が学内SNSの設計を依頼するが、マークは友人のエドゥアルドとともにそこに独自のシステムを加え、“ザ・フェイスブック”として公開する。


映画は、アイデアの盗用を主張するウィルクルボス兄弟、後に会社を追いだされたエドゥアルドらとの調停の過程で、フェイスブックの誕生・成長秘話を詳らかにしていく。マークは天才プログラマーである一方、自信過剰で人を見下しあらゆるものに独善的。唯一、ナップスタープログラマー・ショーンの言葉には耳を貸すが、彼も後に切り捨てる。若手弁護士がその印象を語るように彼は非常にイヤな奴だが、よいプログラムを書き1人でも多くのユーザーにサイトを利用してもらいたい信念は絶対に曲げない。己の利益だけを求めているのではない、フェイスブックというある種の公共財を提供していることで彼の専横は正当化されるのだ。


◆以下 結末に触れています◆


やがてマークは巨万の富を手にするが、その代償は孤独。5億人がつながるSNS創設者が、1人の友人もいない究極の皮肉。畏敬の目で見られても決して尊敬はされない。元カノも、能力は認めてくれても人間性は否定する。「市民ケーン」を思い出してしまったが、マークは臨終に際しては“エリカ”とつぶやくのだろうか。。。