こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワラライフ!!

otello2011-01-21

ワラライフ!!

ポイント ★★
監督 木村祐一
出演 村上純/香椎由宇/田畑智子/高岡蒼甫/鈴木杏樹/吉川晃司
ナンバー 302
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人生とは小さな思い出の積み重ね。大人になってふとした瞬間に脳裏に浮かぶ場面は、たとえそれが当時の自分には苦い出来事であっても、振り返って客観的に考えると、そこには両親の愛や他人の思いが満ちている。映画は主人公が生まれ育った家のあちこちに染みついた家族との共有体験を断片的に再現し、彼がいかに豊かな人間関係に恵まれてきたかを描く。そして結婚を目前にして、些細な事も時と共に大切な財産になると気づいていく。そんな、過ぎ去った日々を肯定し未来に希望を抱かせようとする作り手の姿勢があたたかい。


恋人のまりと新しい部屋を探している修一は、実家の引っ越しを手伝いに戻る。古びた家にある家具や小物を運び出している途中、修一は少年時代を顧みる。


駄々をこねて母を困らせた幼稚園時代、三姉兄弟で一本のプラッシーを分けた小学生時代、バイクを盗んで父に叱られた高校時代などが修一の胸に鮮やかによみがえってくる。しかし、それらの映像は唐突で脈絡がなく、お笑い芸人の一発芸をみているよう。記憶を再認識することで懐かしむのでも教訓を得るのでもなく、今の修一と有機的に結びついてこないのだ。エピソードをブツ切りに完結させるのではなく、何らかのつながりを持たせ物語を次の展開に持っていくべきだろう。


◆以下 結末に触れています◆


唯一、不動産屋の営業マン・小倉との因縁だけが修一の過去を現在に関連づける。小学生のころは親友だったのに、いじめがきっかけに疎遠になる。小倉も修一も忘れていたのに、偶然の再会が修一の心の重荷となってのしかかってくる。この事件をなかなか清算できない修一の逡巡が非常にリアルで、いまさら謝ってどうなるのかという言い訳と、これを乗り越えなければ先に進めないという前向きな意思が複雑に交錯し、せっかく居酒屋に行っても突然の誘いで話が盛り上がらない。だが、二度目にはきちんと打ち解けていて、友達っていいなあと思わせる素晴らしいシーンだった。