こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グリーン・ホーネット

otello2011-01-24

グリーン・ホーネット THE GREEN HORNET

ポイント ★★
監督 ミシェル・ゴンドリー
出演 セス・ローゲン/ジェイ・チョウ/キャメロン・ディアス/クリストフ・ヴァルツ
ナンバー 18
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


一瞬の集中力で時間を引き延ばし空間を縮ませるような3Dの映像が新鮮だ。カンフーテクニックは冴え渡り、チンピラが手にする武器を瞬時に判別し、次の動きを予測する。それはまさに達人の域に達した者のみが味わえる特殊な感覚だ。だが、映画はその武術家が繰り出す圧倒的なスピードと切れ味の技以外に見るべきところは乏しい。頼りのない主人公を優秀な部下がサポートする設定ならばコメディにするのが定石と思うが、笑いのセンスも彼らが駆る秘密兵器満載の武装車だけでイマイチこなれておらず、悪ふざけしているようにしか映らなかった。


急死した父を継いで新聞社の社長となった放蕩息子のブリットは、助手のカトーとともにグリーン・ホーネットというヒーローになる。そのコンセプトは“悪党をやっつける悪党”、さっそく街を牛耳るギャング・チュドノフスキーの麻薬工場を襲う。


もともとブリットに人の役に立つ意思はなく、大衆が好む話題を提供して新聞売り上げを伸ばそうとしているにすぎない。身体能力や知力・人格に優れているわけでもなく、すべてがカトー任せ。カトーを従え悪を倒していく過程で人間的に成長するわけでもない。はっきり言ってカトーひとりの方がよほどスーパーヒーローとして活躍できそうだ。しかし、ブリットはカトーの雇い主の立場を利用して、あくまでカトーに命令しようとする。'60年代ならばいざ知らず、白人の言いなりになる中国人という構図はいかにも時代遅れ。せめてブリットにも、アホはアホなりに頑張っている姿勢があれば応援したくもなるのだが、最後まで熟慮や責任感とは無縁なままだ。これではカトーの奮闘も報われまい。


◆以下 結末に触れています◆


それでも、まだサブキャラが個性的ならば物語が引き締まるのだが、チュフドノフスキーはビジネスマン然として魅力に乏しく、キャメロン・ディアス扮する秘書に至っては一体何しに出てきたのわからない。オリジナルへのリスペクトが感じられない作品だった。