こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

GANTZ

otello2011-01-31

GANTZ


ポイント ★★*
監督 佐藤信
出演 二宮和也/松山ケンイチ/吉高由里子/本郷奏多/夏菜/綾野剛/水沢奈子
ナンバー 25
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


謎の物体に運命を握られ、生き残るために仕方なく闘う人々。意味を知っている者はうまく立ち回り、そうでない者は消滅する。ほんのわずかな希望を胸に強大な敵に立ち向かっていく過程で、彼らは人間の本性をむきだしにしていく。誰かを信じたいけれど信じられない、でもひとりでは殺されてしまう。だがそこで、仲間を信頼して力を合わせようなど正論を吐くものは偽善者と罵られるのだ。そのあたりに、他人との関わりが希薄になった現代の空気が濃厚に凝縮されていた。


線路に落ちて電車に轢かれた玄野と加藤はマンションの一室で目覚める。そこにはふたりのほかにも、数人の男女がいた。彼らは黒い球体・GANTZから武器と戦闘服を与えられ、星人を倒せと指令を受け現場に飛ばされる。そこには異形の巨人が待ち構えていた。


GANTZは正体も意図も不明、ただ一度死んだ人の命を操る能力を持ち、指令をクリアすれば生き返りが可能というルール。それには星人を制限タイム以内に退治し得点を累積していく。まさに命がけのゲーム、脱落した者に待つのは本当の死だ。人生をやり直そうとしている加藤は何としても生きたい、小学生時代は正義感あふれた少年だった玄野はすっかり人生に疲れている。サバイバルのために武器を手にしなければならない現実を前に、参加させられている“疑似死者”の意識は徐々に変わっていく。


◆以下 結末に触れています◆


ミッション以外の時間、彼らは以前の日常に何事もなかったかのように戻っている。その目的は、この世界に無事帰りたかったら危険を冒しても逃げずに銃を取る意識を植え付けること。それは、冒険せずともそれなりの暮らしができるぬるま湯の世の中にどっぷりとつかり、失敗を恐れてチャレンジしない日本の若者に対する強烈なメッセージなのだ。逆境に抗い、自らの手で結果を出せという。ただ、星人たちは何のメタファーなのだろうか。憎しみの対象とはとても思えないのだが。。。