こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ランウェイ☆ビート

otello2011-02-02

ランウェイ☆ビート

ポイント ★★*
監督 大谷健太郎
出演 瀬戸康史/桜庭ななみ/桐谷美玲/IMALU/田中圭/田辺誠一/吉瀬美智子/RIKACO
ナンバー 22
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ファッション誌から抜け出したようなスカート男子、いつも涼しげな目もとで誰にでも笑顔を向け、たちまちリーダー的存在になっていく。高校生が仲間を集め、力を合わせて困難を乗り切り、目標に向かって突っ走る。そういう物語のテーマはスポーツか音楽と相場は決まっていたが、この作品では服飾を取り上げる。男子高校生が古い足踏み式のミシンを器用に操る姿には新鮮な驚きがあった。映画は生徒たちの友情と成長を描きつつ、優れたデザインと鮮やかな色遣いの服に身を包んで個性を主張する素晴らしさをいかんなく表現する。


東京の高校に転校してきたビートは文化祭のファッションショーのデザインを担当する。プロのモデルのミキ、ひきこもりPCおたくのワンダ、進行係のメイ、音楽担当のアンナらが中心になってクラスをまとめるが、高校の廃校が決定、文化祭も中止になる。


「信じれば自分は変われる」と宣言し、いじめられていたワンダを一夜でイケてる男に変身させるビート。彼の持つ前向きな性格はクラスメートに伝染し、熱意と訓練次第でカッコよく服を着こなせることを証明していく。一方で、自分と母親を捨てた有名デザイナーの父に対する複雑な思いを持て余していて、その感情を服作りにぶつけていくのだが、ビートのデザインはミキをうならせるばかりかプロのデザイナーまでがアイデアを盗むほど。さらに白血病の恋人がいたりして、「いかにも」というベタな設定の連続なのだが、映像のもつ疾走感が欠点を忘れさせてくれる。


◆以下 結末に触れています◆


結局、ショーは地元住民の協力を得て母校の校庭で開催、洗練されたステージはとても高校生のものとは思えない完成度。特に地味なメガネ女子が本番直前まで衣装のトラブルであわてていたのに、ステージに上がる直前に無駄なパーツを破り捨て、メガネをはずして髪をほどくと見違える美女になるシーンは、自信を持つことで人間は美しくなれると教えてくれる。全体的にディテールに難があるものの、高校生ならではの怖いもの知らずの突破力で道を切り開いていく過程がパワフルで楽しめた。