こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

毎日かあさん

otello2011-02-08

毎日かあさん


ポイント ★*
監督 小林聖太郎
出演 小泉今日子/永瀬正敏/矢部光祐/小西舞優/正司照枝/田畑智子
ナンバー 32
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


仕事と子育てに忙殺され、おまけにアル中の夫まで抱えている。そんな漫画家の、心休まる時のない他愛ない日常をコミカルに描く。しかし、ちょっと抜けた息子のオチが読める奇行や、バカ亭主の見栄っ張りなところなど、本来は笑いを取るべきところなのにまったく笑えない。おそらく、原作者が漫画向けにウケを狙ってデフォルメしたエピソードを、そのまま何の加工もせずに映像化したためだ。ヒロインの実生活のリアルと漫画の中のギャグが同じ視線で語られても、映画としてのまとまりに欠くだけで、スベった一発芸の連続のようだった。


6歳の息子と4歳の娘、実の母と暮らす理恵子は保育園に子供を預けた後は連載の締め切りに追われる日々。しばらくして長男が小学校に入学すると入院中の夫が家に戻ってくる。ところが、夫には生活力はなく、酒に手を出しては吐血を繰り返す。


理恵子はがんばり屋さんだ。出来の悪い息子や父親になつく娘の愚痴をママ友と言い合ったり、夫に対し時に怒りを爆発させたりもするが、基本的にはきちんとした大人。「自分と同じ匂いがするから」と戦場カメラマンだった夫と結婚するが、彼の度を超えた人間的な弱さにも決して見捨てたりはしない情も持っている。「嘘ばかり付いてきた」と独白するように、本当の彼女は漫画で描く彼女自身のようなキャラではなく、すごくまじめな人なのだろう。だからこそ自分を漫画にしたときに、もう一人の客観的な自分がツッコミを入れる。そうすることで本心をさらけ出し、現実とのバランスをとっているのだ。


◆以下 結末に触れています◆


やがて夫のがん宣告とともに、家族の物語に収斂していく。そこでも一話完結のショートストーリーを無理やりねじ込んで、つながりの悪い流れになっている。もう少し脚本の段階で、原作のエッセンスを盛り込みつつも一貫したストーリーを構築すべきだった。