こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

男たちの挽歌

otello2011-02-21

男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW


ポイント ★★
監督 ソン・ヘソン
出演 チュ・ジンモ/ソン・スンホン/キム・ガンウ/チョ・ハンソン
ナンバー 44
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


固い友情で結ばれた男と男、愛と憎しみに翻弄される兄弟、二つの裏切りと三つの復讐。決着をつけなければならない運命の糸に導かれた4人の男たちの思いが、無数の銃弾とともに交錯する。流麗なカメラワークが紡ぎだすスタイリッシュな映像は犯罪組織に生きる者たちの理想を反映し、それを追う刑事の泥臭い人生と好対照をなす。だが、そこで描かれる物語はウエットな感情を強調し過ぎ、非常に重い。いくら銃器の扱いが洗練されていても、男くさい世界とは程遠い作品になってしまった。


脱北者のヒョクとヨンチュンはプサンの武器密輸組織の幹部としてタイの組織と取引するが、部下のテミンの内通でヒョクは逮捕、ヨンチュンはタイの組織に報復した際右足を撃たれてしまう。3年後、ヒョクは足を洗ってプサンに戻ると、組織の実権はテミンが握り、ヨンチュンは洗車係に落ちぶれていた。


ヒョクには北に残してきたチョルという弟がいるが、チョルは脱北後刑事になってテミンを追っている。ヒョクは何度もチョルと和解しようとするが、自分を見捨てたヒョクをチョルは許そうとしない。そんな中、ヒョクはヨンチュンにテミンの組織のカネを奪う計画に協力を求められる。信頼と嫉妬、後悔と贖い、欲望と苦悩、ヒョクは3人の男の輪の中心でもがき苦しみ、何をすべきか迷った末、己の信じた道を選ぶ。たとえ先にあるのが破滅であるとわかっていても。そのあたりのヒョクのキャラクターがいかにも愚直で、ストーリーは男としての筋を通そうとするばかりに、人間関係とそれにまつわる因縁をいたずらに複雑にしてしまっている。


◆以下 結末に触れています◆


そして、ヨンチュンは組織構成員が放った数十発の銃弾を全身に浴び、立ったまま絶命する。そのスローモーションの演出はエモーショナルなのだが、なんか30〜40年くらい昔の映画を見ているような古臭さ。結局4人とも哀しみの中で息絶えていくが、滅びの美学よりも懐古趣味が目に付いた。あと、兄弟の後見人らしきパク刑事って何者なのだ? ヒョクが犯罪組織と関わっているのに立場が悪くならないのだろうか…。