こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

戦火の中へ

otello2011-02-22

戦火の中へ 71 Into the Fire


ポイント ★★*
監督 イ・ジェハン
出演 チャ・スンウォン/チェ・スンヒョン/クォン・サンウ/キム・スンウ
ナンバー 45
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


降り注ぐ砲弾に破壊される建物、攻めよせる敵兵の圧倒的な人海戦術に次々と倒れていく味方。絶望的な戦況の中、少しでも力になろうと銃弾飛び交う前線を高校生が走り回って弾薬を補給する。轟音と銃声、炎と硝煙、そして至近距離での白兵戦、飛び散る肉体と後に残された瓦礫。映像は彼が体験した戦場を臨場感たっぷりに再現する。一歩間違えれば確実に待ち受ける死、それでもコミュニストから祖国を守るために懸命に自分を奮い立たせる。少年にさえも引き金を引かせる戦争の現実を直視するのは、犠牲になった人々への最大の供養なのだ。


朝鮮戦争初期、北の侵攻に撤退を続ける韓国軍は71人の学徒兵に浦項の守備を任せる。隊長に任じられたジャンボンはみなをまとめようとするが、少年院上がりのガプチョらがなかなか命令に従わず統率がとれない。そんな中、パク少佐率いる北の精鋭部隊が浦項に進軍してくる。


学徒兵といっても実戦経験はゼロ、小銃の扱いすら知らない彼らが彼らなりの教練を積み、武器兵器の扱いを覚えていく。その過程で哨戒にあたっていた北の小隊を銃撃戦の末全滅させてしまう。さらに待ち伏せにあった時も、死傷者は出すものの何とか撃退する。その際、まだ10歳くらいの兵士をガプチョは射殺するが、殺人マシーンのように見える共産軍も、実は子供にまで動員をかけないと維持できないほど窮乏している。同じ民族の少年と子供が銃口を向けあう、朝鮮半島にはこんな悲劇の記憶が染みついていることに改めて胸をえぐられる思いだった。


◆以下 結末に触れています◆


やがて、パク少佐の本隊が学徒兵たちを攻撃する。そこでも学徒兵たちは精鋭部隊に対し互角の戦いを見せる。だが、軍事訓練を受けた兵士相手に素人同然の彼らがここまで善戦するのには疑問が残る。ましてパク少佐はキム・イルソン直属のエリート軍人。映画は、クライマックスの戦闘シーンが壮絶をさを極めるほど、物語のリアリティが遠くなるという矛盾はらんでいた。大義のために若い命を散らした学徒兵に敬意を示しヒロイックに描くのは理解できるが、彼らを犬死させた方が戦争の悲惨さを強調できたはずだ。