こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サンクタム

otello2011-02-26

サンクタム SANCTUM


ポイント ★★*
監督 アリスター・グリアソン
出演 リチャード・ロクスバーグ/リース・ウェイクフィールド/ヨアン・グリフィズ/アリス・パーキンソン
ナンバー 47
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人の接近を拒む山深いジャングルに穿たれた巨大な穴。その深淵は征服欲や功名心、そして探究心といった欲望をすべて飲み込んでしまうかのごとき漆黒の闇だ。だが、誰も到達したことがないからこそ、探検家は自らの足跡を最初に残そうとする。垂直に陥没した基底部から伸びる複雑に入り組んだ洞窟のさらに奥を目指し、何が待ち受けているのか己の目で確かめなければ気が済まない。その先に横たわっているのは澄み切った水をたたえた地底湖、地下河川。映画はまだ見ぬ世界を壮大な3Dでリアルに表現するとともに、大自然の前での人間の無力さとあきらめずに立ち向かう勇気の大切さを描く。


ニューギニア奥地の洞窟を調査するフランクの一隊に、彼の息子ジョシュ、スポンサーのカール、彼の恋人ヴィクトリアが合流する。そんな時、地上で熱帯低気圧が発生、洪水で出口を塞がれたフランクら5人が孤立する。


地底に突然広がる大聖堂のような空間。人工の光に照らされた幻想的な地底湖。カメラはそれらを立体的な奥行きで見せるとともに、数億年の歳月と雨水が地下にしみこむ途中で作り上げた芸術的なまでの美しさを再現する。洞窟の陰や水底に未知の生物が待ち受けているわけでもなく、取り残されたメンバーの中にいる裏切り者に命を狙われるわけでもない。それでも、岩と水が織りなす圧倒的な質感は上質なスペクタクルとなっている。


◆以下 結末に触れています◆


物語はフランクの生き方に反発を覚えていたジョシュが、死と隣り合わせの脱出行を共にする過程で父の偉大さを知り、彼への思いを尊敬に変えていく。一方で、フランクは半人前だと思っていたジョシュがいつしか一人前の探検家に成長していく姿に満足していく。アクションやスリルには乏しいものの、終始狭い洞窟の圧迫感がスクリーンから迫り、息が詰まる緊張感が絶えず襲ってくる。生還するためには何をすべきで何をすべきでないか。生き残る見込みのあるものは全力で助け、その可能性のない者は冷酷に切り捨てる。フランクの、隊員の安全を守るための判断がとても印象的だった。