こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

大韓民国1%

otello2011-03-04

大韓民国1%

ポイント ★★
監督 チョ・ミョンナム
出演 ソン・ビョンホ/イム・ウォンヒ/イ・アイ/キム・ミンギ
ナンバー 298
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


選びぬかれた最優秀の兵士が集まる韓国軍の精鋭部隊。その“男の世界”に志願した娘は、厳しい訓練以上に、好奇心と嫉妬に苦しめられる。女性差別を公然と口にする上官、下心を持って近づいてくる同僚、そして女だからとなめた口をきく兵卒、他の者も「お手並み拝見」と彼女を遠巻きに見つめているだけで決して手助けはしない。そんな男たちの中でひとり自らの意思を貫き通そうとするヒロインの姿が健気で愛らしい。


訓練課程をトップで通過したユミは海兵隊特殊捜索隊に入隊する。先輩のいじめに耐える日々の中、やっと与えられたミッションは最下位チームのリーダーとなってチームの成績を上げること。はじめは女の指揮官に反発していた隊員たちも、徐々にユミの根性に触れて心を開いていく。


最初は興味津々でユミに言いよるが、相手にされないと手のひらを返すように彼女の足を引っ張るワンという先輩が、男社会の心理を象徴している。ユミに対して優位に立っているうちは優しくするが、競争相手と認識し、さらに自分より有能であると知った時には、もはや憎しみとなって彼女を蹴落とそうとするのだ。ただ、前半のワンの描写がコミカルな一方、後半は明らかにユミに陰湿な敵意を抱いている。この転調は、実戦に向けて緊張を高める趣向には見えず、映画の性格をかえって分かりにくいモノにしている。


◆以下 結末に触れています◆


やがてワンによる演習中の妨害工作で、ユミとワンの小隊は北朝鮮領の島に漂着する。そこから決死の脱出をするのだが、ユミが特殊部隊で身に付けた撹乱法や格闘術など見せ場はいくらでも作れたはずなのに、ここも緊迫感に乏しく鬼ごっこをしているよう。なによりユミが「男でもほとんど耐えられない」ほどの地獄の特訓にどう立ち向かっていったかを描かれていないのが物足りない。また、着替えとかトイレとか、紅一点ならではの苦労もあっさりスルーする。グランドを走るだけでなく、せめて「GIジェーン」みたいに頭を丸めて筋骨隆々の肉体を作るくらいの強固な決意を見せてほしかった。