こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ツーリスト

otello2011-03-08

ツーリスト THE TOURIST

ポイント ★★
監督 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演 ジョニー・デップ/アンジェリーナ・ジョリー/ポール・ベタニー/ティモシー・ダルトン
ナンバー 58
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


偶然の出会いなのか仕組まれた必然なのか。旅行中、美女に声をかけられた男が彼女と道行を共にする。その先で待ち受けていたのは、高級ホテルのスイートルームと武装した物騒な男たち。訳が分からないまま逃げまどう男は、自分がいつの間にか、ギャングが行方を捜している横領犯に仕立て上げられていたことを知る。不運にもトラブルに巻き込まれた男、正体を隠した女、そして手紙だけで姿を見せない謎の男。映画はミステリーにアクションを絡ませて予想もしない方向に舵を取る。


パリのカフェで手紙を受け取ったエリーズは、指示に従いベネチア行きの列車に乗り、米国人のフランクに声をかけ親しげに振舞う。エリーズを見張る警察はフランクを捜査中の逃亡犯・ピアスと勘違いして手配、その情報がギャングに漏れフランクはギャングに追われる。


事情が飲み込めないうちに銃を突き付けられ、地元警察に保護されたと安心したのもつかの間、手錠をかけられてギャングに引き渡されるフランク。ハプニングは旅の醍醐味とはいえ、エリーズとホテルにチャックインするのは楽しいが、命を狙われる危険までは冒したくない、そんな彼の焦りと戸惑いが心をくすぐる。だが、彼が真実に近づいていく過程は道半ばで終わってしまう定石破りの展開を見せる。


◆以下 結末に触れています◆


その後、米国に帰ったはずのフランクがエリーズのもとに舞い戻り瞬く間に事件を解決してハッピーエンドに持っていくのだが、あまりにも強引なこじつけは、それこそ「驚愕の結末」と呼ぶにふさわしい。電子タバコを愛用していたフランクが本物を吸っていると思ったら、彼こそ実は皆が待ち望んでいるピアス本人だったなどといった、物語の設定を根底からひっくり返すようなどんでん返しには、あいた口がふさがらなかった。もしかしてこの作品はベネチアの旅情を楽しむロマンチックコメディだったのだろうか。まあ、旅先で見知らぬ美女に誘惑されても、鼻の下を伸ばす前に冷静になれという警告にはなったが。。。