こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ミス・ギャングスター

otello2011-03-10

ミス・ギャングスター


ポイント ★★★*
監督 カン・ヒジョン
出演 ナ・ムニ/キム・スミ/キム・ヘオク/イム・チャンジョン
ナンバー 54
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


「バアさん」と呼ばれると血相を変えて反論し、相手が降参するまで語気を弱めないオバハンの辛辣な悪口と軽口の数々が小気味よい。家族関係には恵まれていない寂しさを顔に出すまいと虚勢を張っている。一方で同じような境遇の友人たちへの思いやりは篤い。口は汚いが人情にもろく、怒ると怖いが根は優しい。そんな肝っ玉の太い韓国のオモニをキム・スミが大熱演。彼女の図々しいまでのエネルギッシュな振る舞いは映画に適度な笑いをもたらし、大いに楽しませてくれる。


ジョンジャ、ヨンヒ、シンジャのオバハン3人組は、万引きした盗品を売ったカネを貯め、ハワイ旅行を楽しみにしている。だが、代金を振り込みに銀行に行くと銀行強盗に遭遇、カネを強奪される。3人はカネを取り戻すために犯人を探し始める。


銀行内でカネを奪われたのに、振り込み印を押していなかったという理由で保険の対象にならず、仕返しに3人はこの銀行を襲うことを計画する。マヌケな犯罪者からトレーニングを受けるが、老体に鞭打つ様子が痛々しくも思わず吹き出してしまった。そして、彼女たちは本当に銀行強盗を決行するが、あえなく警察に包囲されてしまう。その後、交渉、逃走と物語は急加速するが、その過程で銀行や警察の強引なやり方に反感を覚えた一般市民がオバハンたちに味方する。経済効率や法律よりも年長者を敬う伝統的な儒教道徳がいまだに色濃く残る韓国人の姿は、世間はまだ捨てたものではないと思わせるてくれる。


◆以下 結末に触れています◆


抜群のチームワークと手際良さで大量の万引きをする場面から、大酒を飲み語り合うシーン、さらにはバイクとミニバンを使った大逃走劇、親友の夢を叶えてやろうとする友情。映画的な要素が満載の展開と、もはや女を捨てたオバハンたちの飾らない本音がかえって魅力となり、コミカルな中にも琴線に触れる言葉が胸を打つ。オバハンパワー炸裂の活劇の中で人生のほろ苦さも味あわせてくれるサービス精神旺盛な作品だった。