こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

SOMEWHERE

otello2011-04-04

SOMEWHERE


ポイント ★★
監督 ソフィア・コッポラ
出演 スティーヴン・ドーフ/エル・ファニング/クリス・ポンティアス
ナンバー 80
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


同じ道を何度も周回するフェラーリは、出口が見えない彼の現状を象徴しているよう。俳優として一応の成功を収めた男は、有り余るカネと暇で享楽的な生活にどっぷり浸かりつつもどこか「ここは自分の居場所ではない」と違和感を覚えている。パーティで友人とバカ騒ぎをしたり行きずりのセックスにふけるのは孤独を認めたくないから。映画は、そんな男が離れていた娘との触れ合いを通じて、己が本当に求めていたものは何かに気づいていく過程を描く。しかし、連綿たる間延びしたシーンと緊張感に乏しい演出は、時間の流れをリアルに再現してはいるが、感情の起伏に乏しく平板な印象は禁じえない。


贅沢なホテルで自堕落な暮らしを送るハリウッドスターのジョニーは、別れた妻から11歳になる娘のクレオをあずかってくれと頼まれる。クレオの成長に和ませられたジョニーの心に今までにない感触が生まれ、新作映画のイタリアプロ-モーションにクレオを連れていく。


クレオとのひとときはジョニーにとって新鮮な発見の連続だ。常に周りが気を使ってくれていた環境で、クレオにだけは気を使わなければならないことがもたらす、他人を思いやる気持ちが残っていた事実への驚き。まだ守ってやらなければならない、でも自立心も芽生えている。多感な年頃の娘に対する父親の自覚がジョニーに心地よい温かさをもたらしていく。ところが、カメラはあえてジョニーの内面に踏み込もうとはせず、不器用な彼の行動を見守るばかり。そこからはユーモアもペーソスも感じられなかった。


◆以下 結末に触れています◆


特殊な世界で生きてきたからだろう、もはや中年男といっても過言ではないジョニーはいまだ精神的に大人になりきれていない。フェラーリを荒野の一本道に乗り捨て、やっとジョニーは新しい道を歩みだす。それはクレオと過ごした短い日々に固めた親子の絆を取り戻すために人生をやり直そうとする決意。だが、こんないい年したオッサンの感傷、わざわざ映画にするほどのものなのか?