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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジュリエットからの手紙

otello2011-04-07

ジュリエットからの手紙 LETTERS TO JULIET


ポイント ★★★*
監督 ゲーリー・ウィニック
出演 アマンダ・セイフライド/ヴァネッサ・レッドグレイヴ/ガエル・ガルシア・ベルナル/フランコ・ネロ
ナンバー 79
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


その思いが真実だと信じている限りは、きっともう一度会えるはず。半世紀もの間眠っていた手紙に残されていた秘密と後悔は、婚約者との距離感に悩む娘に発見されて命を吹き込まれる。そこから見えてくるのは、歳月は人の姿を変えても、心の中にある純粋な部分は決して色あせないということ。物語は老婦人の古い恋人を探す旅を通じて、結婚に迷うヒロインもまた運命の人は本当は誰なのかを問うていく。ロミオとの愛に殉じたジュリエットの魂が今も生きているような使いこまれた石作りの美しい街並みと大地の実り豊かな田園、北イタリアの詩情あふれる風景をバックに繰り広げられるロマンスは口当たりまろやかなワインのごとく豊潤だ。思わず恋の魔法に酔ってしまいそうになる。


記者志望のソフィはヴィクターとヴェローナに婚前旅行、「ジュリエットの家」の壁に観光客が張り付けたメッセージに返事を書くグループと出会う。そこでソフィはクレアという女性が50年前に認めた手紙を見つけ返信を送ると、クレアが孫・チャーリーを連れてヴェローナにやってくる。


クレアの目的はかつて駆け落ちを約束しながら叶わなかった地元の青年・ロレンツォとの再会。もはや夫もなくし、残りの人生を悔いなきものにするために、少女のころの気持ちに正直に生きようとする。ソフィも得意の調査能力を発揮してクレアの初恋の人探しを手伝う。道中、幾人もの別人のロレンツォを訪ねるが、ジイサンの年齢に達してても彼らは一様に見知らぬクレアを歓迎する。美しさを保とうと努力している女性に対して惜しみのない賛辞を送るのはイタリア男の礼儀、さらりと口にする姿が板についている。


◆以下 結末に触れています◆


この道行を通じてスノッブで懐疑的な典型的英国人・チャーリーと、彼からみると下品な物言いのニューヨーカーのソフィが、言葉は通じても文化が違う英米の壁を乗りこえて理解しあうようになる。それはその昔クレアとロレンツォが感じた「真実」と同じもの。物思いにふけ、抱き合い、愛の素晴らしさを語り合う、そんなバルコニーに象徴される「ロミオとジュリエット」の設定をうまく生かした脚本がとてもウイットに富んでいて、幸せな気分になれる作品だった。