こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ガクドリ

otello2011-04-13

ガクドリ

ポイント ★*
監督 江良圭
出演 木ノ本嶺浩/加藤和樹/三浦葵/佐々木喜英/杉本有美/高知東生/嶋大輔/村野武範
ナンバー 39
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


寝てもドリフト覚めてもドリフト、そんな若者が学生たちのドリフトNo1を競う大会を目指して切磋琢磨する。まったくの素人だった主人公がさまざまな出会いの後に未熟でジコチューな性格を変えていく過程で、同じ目標を持つ部員と友情を交わし信頼を得て恋をするという成長の物語に、一匹狼の男やケバいギャルを絡めるのだが、いかんせん脚本の骨格があまりにも脆弱。3人のエピソードが途中で交錯したり、クライマックスに向かって収斂するわけでもなく、ただ思い付きを映像にしているかのよう。もっと人物像を深く掘り下げるとか、アッと驚くアイデアがひとつくらいは欲しかった。


大学に入学したマサキは自動車部に入部するが、非常識と礼儀知らずを先輩にしかられる。孤高のドライバー・速水は峠で勝負した相手を大けがさせたのをきっかけに自己を見つめ直す。キャバ嬢の莉香は稼ぎをすべてクルマにつぎ込んでいる。


彼らは、学生ドリフト選手権、通称ガクドリ出場を夢見ている。ところが、彼らの、特にマサキのテクニックはとても競技者を志すレベルに達しておらず、ガキの危険な遊びにしか見えない。そこにはメカに対する知識や運転技術へのリスペクトは微塵もなく、中途半端なコメディの味付けでお茶を濁すばかり。そもそも語り部たる熊太郎はほとんど出番がないし、カメラマンが追う「光の一団」にもオチがつかない。莉香たちが標榜する「女にしかできないドリフト」に至ってはいったい何なのか理解に苦しむ。せめて彼女が実演してくれれば納得するのだが…。


◆以下 結末に触れています◆


やがて腕を上げたマサキはやっと他の自動車部員たちの代表であることを自覚し、ガクドリ出場権を得る。その際も「仲間仲間」と斎藤祐樹のような言葉を口にする。そしてガクドリ本番、今まで練習した成果を披露してくれるのかと思いきや、ここでも大技は出ないまま。製作費が少ないのはわかる、それでもカネを取って客に見せるつもりならば、少なくても作り手の熱意だけは感じたかった。