こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

孫文の義士団

otello2011-04-20

孫文の義士団 十月囲城


ポイント ★★
監督 テディ・チャン
出演 ドニー・イェン/レオン・ライ/ニコラス・ツェー/ファン・ビンビン/ワン・シュエチー/レオン・カーフェイ/フー・ジュン/エリック・ツァン
ナンバー 93
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


革命の理想に身を投じ、国の未来のために命を捧げる。大切なモノを守ろうと自らを犠牲にする戦士たちの力尽きてゆく姿が美しい。自分や家族のためではない、高邁な大義に殉じた満足感と、きっと生き残った仲間は己の名を胸に刻んでいてくれている安心感が、彼らの死を誇り高きものに昇華しているのだ。映画は時代の転換期を迎えた20世紀初頭の香港、指導者の身辺を警護しその安全を確保した人々を通じて夢を追い求めて闘うことの素晴らしさを描く。


1906年、日本亡命中の孫文は地方の実力者に革命を呼び掛ける決起集会を香港で催す。西太后は暗殺団を送り込み孫文殺害を計画するが、革命支持者で新聞社社長のリーは活動家のシャオバイに促されて孫文の護衛隊を結成、暗殺団の襲撃に備える。


天井からロープを伝って急降下し、毒液を撒き、フックのついた武器で護衛隊を襲う暗殺団はまるで忍者のよう。迎え撃つ護衛隊は少林寺の大男や鉄扇を操るホームレス、カンフーの達人だけでなく、車夫・インテリ・学生までが孫文のために奮闘する。孫文が会合を持つ1時間の間持ちこたえる使命の下、彼らは圧倒的な人数の暗殺団に互角の戦いを挑む。だが、その壮大な武侠シーンはリアルと特殊効果が入り混じった不思議な映像で、爆発的な強さの暗殺団の頭目と護衛隊のカンフー使いの壮絶な戦いは、手に汗握るというより格闘ゲームを見ている気分になる。一方、鉄扇の使い手の華麗な技もワイヤーアクションばかりでハリウッド映画の影響を受けすぎている。もっと中国人にしか成し得ない斬新なアクションシーンを演じてほしかった。


◆以下 結末に触れています◆


小難しいイデオロギーを省いて活劇に特化したのは良いが、ただ影武者を仕立てて人力車で逃げ回るだけなのは芸がなさすぎないか。もともと多勢に無勢、形勢不利なのは分かっている、ならばもう少し暗殺団を罠にはめ手玉に取るアッと驚く作戦を見せてくれないと、2時間20分近い上映時間を持たせるのは少し無理があるのではないだろうか。。。