こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

あなたの初恋探します

otello2011-05-17

あなたの初恋探します

ポイント ★★*
監督 チャン・ユジョン
出演 イム・スジョン/コン・ユ/チョン・ホジン/リュ・スンス/チョン・スギョン
ナンバー 112
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


初恋の人への思いを引きずっていて、いつまでたっても結婚できない。そんな、ときめきを忘れてしまった三十女が仕事に打ち込んでしまう心情がリアルだ。映画は、若いころの出会いを運命と信じ現実から逃げているヒロインと、彼女のために“初恋の人探し”を請け負った男との珍道中をコミカルに描く。いつもノーメークで作業着の彼女を見ていると、普段から身だしなみをきちんと整えていなければ恋も運命も引き寄せられない事実を実感する。


婚期を逃しつつあるジウは、父に連れられ「初恋探し株式会社」を訪れ、所長のギジュンにジョンウクという男の消息を探してもらう。手掛かりは10年前のインド旅行だけ。ジウとギジュンはジョンウク名の男をひとりずつ訪ね歩く。


旅先で恋に落ち、再会を約束したのにジョンウクに会いに行かなかったジウ。美しい思い出のエンディングが予想と違っていると悲しいからと、わざとすっぽかした過去がある。それは旅という非日常でハイになると相手が数倍カッコよく見えるのを知っているから。ジョンウクにとっても同じで、ジウは自分に幻滅されたくなかったのだろう。その気持ちのままミュージカル製作にのめり込んでいるうちに新たな出会いもないままいつのまにか時間だけが経っている、ジウのようなキャリアウーマンがはまりがちな陥穽は世界に共通している。


◆以下 結末に触れています◆


ステージに穴をあけた歌手の代役をジウが務めるシーンでは、元歌手の設定を生かして見事に歌いきる。その際、ジウはメイクをしてきらびやかな衣装に身を包むが、たとえ舞台衣装でも、初めて見るジウの輝かしい姿にギジュンも心を奪われる。結局、本当に自分のことを分かってくれる“運命の人”は、遠い記憶の中ではなく、身近なところにいるのだ。恋の成就を願っているのに、失恋を恐れて一歩踏み出す勇気がないジウは、韓国女性の結婚難を象徴していた。