こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

デビル

otello2011-05-19

デビル DEVIL

ポイント ★★*
監督 ジョン・エリック・ドゥードル
出演 クリス・メッシーナ/ローガン・マーシャル=グリーン/ジェフリー・エアンド
ナンバー 118
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


洞窟の天井から垂れさがる鍾乳石のように魔天楼が下に向かって伸びる。何の変哲もない大都会の風景なのに、映像の天地を逆転し感情を不安にさせる音楽を加えて、ただならぬ雰囲気を醸し出す導入部は、邪悪の気配を濃厚に意識させる。それは「死」の臭いを敏感にかぎつけ、人の外見で現れる。映画は、5人の男女が閉鎖空間で一人また一人と不可解な悲劇に巻き込まれていくなか、生き残った者が相互不信に陥って、自分だけは助かろうと利己的な本能をむき出しにしていく姿を描く。あっさりと命を奪わず、恐怖を存分に味あわせてから殺す、その手口が非常に“悪魔”的だ。


高層ビルのエレベーターが突然停止、男3人女2人が閉じ込められる。管理センターで内部はモニターできるが音は拾えない、逆に管理センターからの指示は内部に伝わる。そんな中、断続的に停電、暗闇でセールスマンに鏡の破片が突き刺さる。


信心深いヒスパニック系警備員がモニター記録に不気味な顔を見つける。それは彼が母親から聞かされていた悪魔のイメージ。だが、エレベーターの中の人間を傷つけ殺意を露わにしているのにもかかわらず、周囲の者は誰も彼の話に耳を貸さない。一方で5人の男女に逃げ場はなく、お互いがお互いを殺人魔ではと疑い、己のエゴをさらす。悪魔はまるで悪意を貪っているかのごとく、彼らの憎悪が強ければ強いほど活動をエスカレートさせる。停電し何も見えず、ぶつかる物音に想像力が刺激され、高まる緊張感に思わず息をのんだ。


◆以下 結末に触れています◆


エレベーター内の様子を監視していた警備員や刑事は、5人の身元を洗いプロフィルを知るうちに、彼らがロクでもない悪人で、偶然を装って集めれられ制裁を受けている可能性を考え始める。それはつまり悪魔の存在を肯定すること。ただ、エレベーター内の男女は重大な犯罪者で、彼らを罰しているという意味で悪魔よりむしろ神の近いのではないだろうか。結局、ひき逃げ犯も自白した結果、罪を償うチャンスを与えられたわけだから。。。