こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉

otello2011-05-21

パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉
Pirates of the Caribbean: On Stranger Tides

ポイント ★★★
監督 ロブ・マーシャル
出演 ジョニー・デップ/ペネロペ・クルス/ジェフリー・ラッシュ/イアン・マクシェーン/ケヴィン・マクナリー
ナンバー 121
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


血沸き肉躍るようなテーマ曲と共に帰ってきた海と冒険と女を愛するヒーローは、期待にたがわず今回も大暴れ。敵なのか味方なのか、ライバルたちの間を行ったり来たり秤にかけ、巧みに譲歩と好条件を引き出していく。ロンドンでの大捕り物に始まり海賊船での魔術、人魚の襲撃、そして宣教師の恋……物語は息つく間もないテンポで疾走、アクションにつぐアクションは圧倒的な情報量で見る者に思考停止状態をもたらす。3Dの奥行きと飛び出す映像に、“映画は大スクリーンで楽しむもの”であると、あらためて思う。


永遠の若さをもたらす生命の泉を探すジャックは元恋人のアンジェリカと再会、彼女の父、海賊・黒ひげの船に乗って航海に出る。同じころジャックのライバル・バルボッサも生命の泉に向かって出帆。しかし、泉がある島にはスペイン人が先に上陸していた。


島に着いた黒ひげたちは儀式に必要な人魚の涙を手に入れるために、歌で人魚をおびき寄せる。人を海に引きずり込み食い殺すと言われる人魚は、はじめは魅力的な姿で近寄り、隙を見て鋭いきばをむき出しにして襲い掛かってくる。彼女たちの憎悪に満ちた表情と、海面をジャンプしては粘着縄で海賊たちを絡め取り海を真っ赤な血に染める残虐さは、人魚の概念を覆すほど強烈なインパクトだ。美しさと邪悪が見事なコントラストをなしていた。


◆以下 結末に触れています◆


やがて、ジャックの一行は泉にたどり着くが、そこでバルボッサやスペイン兵まで入り乱れての大混戦になる。その過程でも、ジャックは黒ひげのいいなりになったりバルボッサと交渉したりと、立場がはっきりしない。なにより泉を支配することでもたらされるであろう莫大な財産にあまり興味がなさそう。バルボッサには黒ひげへの復讐、アンジェリカには父の命を救う明確な目的があったのに、肝心のジャックに泉探しの動機が感じられないのはなぜ? まあ、命がけのスリルこそがジャックが求めている“生きがい”なのは理解できるが。。。