こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パラダイス・キス

otello2011-06-10

パラダイス・キス

ポイント ★★
監督 新城毅彦
出演 北川景子/向井理/五十嵐隼士/大政絢/賀来賢人/山本裕典
ナンバー 138
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


「お前の意志はどこにある」、そう問われたヒロインは一言も返せない。期待を裏切るまいと親の顔色をうかがいながら優等生を演じてきた女子高生が、彼女の生活にいきなり土足で踏み込んできた男の言葉に衝撃を受ける。その出会いはまさに運命、彼女は自身が気づかなかった己の可能性に目覚めていく。きらびやかなファッション、自信たっぷりで強引な男、叶えられる夢。映画は少女漫画のセオリー通りの設定で観客の乙女心を刺激する。受験という日常とファッションショーという非日常のコントラストが鮮やかだ。


進学校に通う紫(ゆかり)は街でモデルにスカウトされるが失神、デザイン学校生徒のアトリエで目覚める。そこで、“天才”といわれるデザイナー・ジョージと知り合う。翌日、紫の教室に現れたジョージは紫を無理矢理連れ出し彼女の髪型を変えてしまう。


高級マンションに一人で暮らし英国車を駆る長身痩躯小顔のイケメン、才能にあふれ仲間の信頼も篤く、愛人の子という生い立ちすら魅力に映る。そんなジョージは女子高生にとって理想のボーイフレンド、まさしく白馬の王子様だ。向井理が扮するジョージのリアリティのなさは、服の機能ではなくデザインを追求する彼が目指す虚業にぴったりはまっている。それにしてもこの男、紫と同学年のはずだが、オープンカーを運転するし酒も飲む。ホントは一体何歳なのだろう。まあ、「巨人の星」の花形満も高校時代からスポーツカーを乗り回していたが。。。


◆以下 結末に触れています◆


その後、紫はバイトでファッション誌のモデルの仕事を無難にこなし、ジョージのグループの卒業制作のモデルも務める。そして紫とジョージの未来が交わるのかと思いきや、まだ自分の足で人生に踏み出していない紫に成長の時間を与えているところが好ましい。全体的にあまりにもイージーな展開なのだが、この作品の対象である若い世代の女性には変にリアルにこだわるより、「夢みる気分」味あわせたほうが受け入れられるという判断なのか。大人にはついていけない部分が多かった。