こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

水曜日のエミリア

otello2011-06-18

水曜日のエミリア
LOVE AND OTHER IMPOSSIBLE PURSUITS


ポイント ★★*
監督 ドン・ルース
出演 ナタリー・ポートマン/スコット・コーエン/チャーリー・ターハン/ローレン・アンブローズ/リサ・クドロー
ナンバー 140
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


キャリア、結婚、家族……。望み通りだった日常が一転して憂鬱で耐えがたいものになっていく。悲しみのどん底にいるのに、傷に塩をすりこむような継子と、愛してくれてはいるが理解の足りない夫。そしてひとりでは背負いきれない秘密と嘘。物語は自分に厳しく他人にも寛容になれないヒロインがたどる心の変遷を通じ、本当の幸せとは何かを問う。女性の社会進出が当然の環境に生まれ育った彼女は、いまだに“人生の成功”というロールモデルが見えない世代でもある。オフィスと家庭、出産と子育て、選択肢が増えた分、迷いも多くなる。映画はそんな彼女が感じている、女として生きるには不確実な時代の空気を濃密に封じ込め、揺れ動く思いをリアルに再現する。


弁護士のエミリアは職場の上司・ジャックと不倫、妊娠して略奪婚をするが、ジャックと前妻の間を行き来する継子のウィルと折り合いが悪い。懸命にウィルの気持ちをつかもうとするエミリアだが、彼女自身産んだばかりの赤ちゃんを亡くした悲劇を乗り越えられずにいた。


前妻のキャロリンはエミリアを激しく憎み、怒りを隠そうとはしない。ベビー用品を捨てられずにいるエミリアの神経を逆なですることばかり口にするウィルは明らかにキャロリンの影響を受けている。ジャックは頼りにならず、いきおいエミリアのうっ憤は浮気を繰り返して母を泣かせていた父に向かう。常に理性的であらねばならない職業に就いていても私生活では感情が優先する、彼女の無防備な姿に少しほっとする。


◆以下 結末に触れています◆


20世紀のキャリアウーマンならば仕事か恋愛かの選択を迫られたが、いまやその両立が当たり前。さらに養育を含めそのすべてをきちんとこなして初めて満足を得られるのだろう。だが、いくらそれを目指しても、誰もがヒラリー・クリントンになれるわけではない、だからこそ一流の医師であるキャロリンを含め、彼女たちは己の喜怒哀楽に正直であろうとするのだ。たとえそれが周囲にはわがままやヒステリーに映っても、感情的なのは人間らしさの象徴なのだから。。。