こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

東京公園

otello2011-06-21

東京公園

ポイント ★★
監督 青山真治
出演 三浦春馬/榮倉奈々/小西真奈美/井川遥
ナンバー 71
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


血のつながらない姉、幼なじみの娘、ベビーカーを押す母親……。いまだに将来の行き先を決めきれずにいる大学生が、彼女たちとの関わり合いの中で本当に己の人生に必要なものは何かを問いかけていく。ところが、あまりにも曖昧で思わせぶりなシーンの連続は、答えなどないことをごまかすための手段にしか見えない。若い登場人物たちはそれぞれに“死”を身近に感じてはいる。だがその影が実生活に深い影響を与えているわけではなく、生きている者同士で慣れ合っているにすぎない。そして、ただただ空疎で冗漫なカットと内容の乏しい会話が繰り返される。


公園で家族写真を撮影している光司は、初島という男からある母子の散歩姿の隠し取りを頼まれる。日ごとに違う公園に現れる母子を追ううちに、光司は姉の美咲の思いに気づいていく。一方、幼なじみで親友の元カノ・富永が事あるごとに光司に絡んでくる。


初島と母子の関係、美咲と富永の間で揺れ動く気持ち、同居している親友とのやりとり。大学の卒業を間近にして、カメラマンとして一歩踏み出すのか、夢を諦めて現実を直視するのか、本来なら光司は真剣に未来を模索していなければならないのに、母子の写真を撮るうちに、日常のどこかに違和感を覚えていく。お互い両親の連れ子だった義理の姉・美咲が自分を愛しているのではという疑惑。近すぎて見えなかった相手の心、それを富永に指摘されて光司もまた美咲をある種の理想にしていたのが明らかになる。しかし、そのあたりの心理描写がいかにも回りくどく要領を得ない。


◆以下 結末に触れています◆


光司への思慕を抑えきれなくなった美咲は、ソファに座った光司の目をじっと見つめる。彼女の視線はすがりつくようでもあり、何かをねだるようでもある。9歳年下で数年間一緒に暮らした義理の弟への秘めた恋心。お互いの背中を抱き合った後にキスを交わした美咲の満ち足りた表情だけが、この映画において唯一確かな“愛”を意識させてくれた。