こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スカイライン-征服-

otello2011-06-22

スカイライン-征服- SKYLINE


ポイント ★★
監督 グレッグ・ストラウス/コリン・ストラウス
出演 エリック・バルフォー/スコッティー・トンプソン/ブリタニー・ダニエル/デヴィッド・ザヤス
ナンバー 148
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


心を惑わす不思議な光に吸い寄せられ、人智を超えた圧倒的なパワーになすすべもない。ミサイル攻撃も効果はなく、破滅の淵に向かって逃げまどう。「地球が静止する日」の中で「二つの文明が遭遇したとき、劣る方は滅ぼされるか奴隷にされる」というセリフがあったが、この映画における地球のシチュエーションはまさに劣る方の典型。襲い来るエイリアンには情けなど一切なく、ただ人間を資源として消費する。その「劣る方」が感じる恐怖や無力感、そして最後まで捨てない誇り、それらは近世の欧州列強によって植民地化・奴隷化された新大陸やアフリカの原住民の絶望そのものだ。もしかして作り手はそれらの人種・民族を祖先に持つのか?


LAの高層マンションで目覚めたジャロッドとエレインは青い光球が空から降ってきて街の住人を吸引する現場を目撃する。翌朝、上空に静止した巨大UFOからクラゲ状の飛行生命体が多数飛来し、マンションに残った人々を攫い始める。ジャロッドたちは残された友人とともに脱出の道を探る。


もはやマンションの外は完全にエイリアンに包囲され、軍隊の応戦も砲声が虚しく響くのみ。一度破壊したマザーシップもすぐに再生し、ジャロッドたちの胸に芽生えたわずかな望みすら打ち砕く。そこで、彼らが己の人生と自分たちの関係を見つめなおしていくのかと思いきや、右往左往するばかり。そのあたりもう少し登場人物の内面にまで踏み込んでいれば物語に深みが出たはずだ。どうせなら、彼らが属する映像産業の“スペシャリスト”としての能力を生かすような構成上の工夫がほしかった。


◆以下 結末に触れています◆


また、巨大UFOやクラゲ型エイリアンのビジュアルは過去のSF大作で描かれたものに酷似し、既視感すら覚えるほど。模倣のディテールではなく粗削りでもいいからもっとオリジナリティを追求してほしかった。まあ、ジャロッドの脳を移植されたエイリアンが、彼の意識を保ったまま妊娠中のエレインを救う場面だけは、命こそが最大の希望であることが伝わってくるが。。。