こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

陰謀の代償

otello2011-06-25

陰謀の代償 THE SON OF ON ONE


ポイント ★★*
監督 ディート・モンティエル
出演 チャニング・テイタム/トレイシー・モーガン/ケイティ・ホームズ/レイ・リオッタ/ジュリエット・ビノシュ/アル・パチーノ
ナンバー 149
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


遠い昔に記憶から消去した過去が、思わぬところから蘇ってくる。誰の仕業で何が目的なのか、関係者の口はすべて封じているはずなのに、告発者は亡霊のように姿を見せぬまま付きまとってくる。根底にあるのは警察に対する敵意と警戒心。映画は警察と一般市民の蜜月関係が終わった’02年、貧困層生活地域に勤務する制服警官が味わう苦悩を再現する。もはや正義や良心なといった理想はなく、組織の体面を保つために汲々とし、地位にしがみつくために犯罪者ではない市民にまで銃を向ける警察の腐敗。そしていつしか悪習に染まっていく主人公が哀しい。


妻子と平和に過ごしていたジョナサンは犯罪多発地域に異動、上司のマリオンから地元新聞が始めたキャンペーンをやめさせるよう命令を受ける。記者が扱うのは、16年前にジョナサン自身が起した後に闇に葬られた2件の殺人事件だった。


マリオンがジョナサンを部下にしたのは、要するに告発状を書いた人間を探しだして始末させるためなのだろう。時に脅迫めいたメッセージを送りつつ彼を監視し、警察の威信を傷つける記事をつぶそうとする。ジョナサンは、事件以後縁を切っていた公営住宅に戻り、昔の知人たちと再会する。その過程で、知的障害があるがたった一人の親友だった男に疑いの目を向けてしまうジョナサン。そこには21世紀になっても一向に解消されない貧困と、むしろ広がった格差といった社会問題が凝縮され、公営住宅の住民の暮らしぶりは同じNY市民なのにのどかなスタッテン島に住むジョナサンと好対照をなす。


◆以下 結末に触れています◆


さらにジョナサンの過失をもみ消した張本人の刑事が登場し、自分の正統性を訴える。確かにクズのようなチンピラを殺したくらいでジョナサンの将来を奪うのは酷だろう。だが、過ちにきちんと決着をつけない限り、真実はいつまでも彼を追い続ける。それでもジョナサンは家庭を守るために汚れた道を選ぶ。それは彼がNY市警の一員になったことの証だというのは、あまりにも皮肉だったが。。。