こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

うさぎドロップ

otello2011-06-30

うさぎドロップ

ポイント ★★★
監督 SABU
出演 松山ケンイチ/香里奈/芦田愛菜/池脇千鶴/木村了/キタキマユ/風吹ジュン/中村梅雀
ナンバー 150
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


小さな女の子を抱えて満員の通勤電車に乗り、保育園までダッシュするサラリーマン。朝は支度にあわただしく、夜は残業のせいで保育園に最後まで残った彼女に寂しい思いをさせている。映画は、ひとり親の仕事と子育ての両立がいかに気力と体力を使い、消耗させるかを再現する。それでも親は“自分を必要としてくれる者”の存在に、実は癒されてもいるからこそ苦難に耐えられるのだ。独身男が成り行きで引き取った親戚の子、物語はふたりが本当の親子のような絆を築いていく過程を通じて、「イクメン」の理想と現実を描いていく。


死んだ祖父の隠し子・りんを預かるはめになったダイキチは早速保育園を探すが、時間的困難にぶつかり、会社に異動を申し出る。余裕ができたふたりは親密度を増していくが、ある時からりんがおねしょをするようになる。


「子供は口でうまく説明できないだけですごく考えている」と、ダイキチの同僚が言うが、りんはりんなりにダイキチしか頼れる者がいないのを分かっていて、必死でしがみつこうとする。ダイキチもそんなりんの胸中をくみ取って、彼女が辛くならないように努力する。そうはいってもまだ6歳、熱を出したり突然姿を消したりもする。お互いを思う気持ちというきれいごとだけではない、比較的素直な感情を持っているりん一人を育てるのでさえこれほど難儀を極めるのだ。ダイキチの孤軍奮闘に一人前の親になることの大変さを改めて思い知らされる。


◆以下 結末に触れています◆


一方でダイキチはりんの生みの母・正子に連絡を取る。正子は漫画家としてのキャリアを優先し、最初からりんを育てる意思はなく、産んでも愛情を注がないようにしていたと言う。男の育児という21世紀的な話題に加え、後半では社会的成功を目指すあまり己の腹を痛めた子を愛さない選択をする母を登場させ、今ではフツーにいる「イクメン」も20世紀には珍しかった、然るに子を産み捨てにする母も近い将来珍しくなくなるだろうと予測する。まあ、お遊戯会の写真に正子が涙を流すシーンで、正子もやはり完全にりんを忘れていないのには少し安堵したが。。。