こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ホームランが聞こえた夏

otello2011-07-15

ホームランが聞こえた夏


ポイント ★★*
監督 カン・ウソク
出演 チョン・ジェヨン/ユソン/カン・シニル/チョ・ジンウン/キム・ヘソン
ナンバー 156
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


戦う相手に同情される、それはスポーツマンにとって最も屈辱的なこと。いくら実力差があっても、全力を出すという最低限の礼儀すら示されないのは侮辱以外の何物でもない。ろう学校の生徒で結成された高校野球チーム、もちろん声による連携はなく、サインとアイコンタクトで意思疎通を図る。だが、ほとんどの選手は当然ながらコミュニケーションが下手で自分のプレーで精いっぱい、バックを信じられない投手の一人相撲で滅多打ちにされたたあと、手抜きをされるのだ。映画はそんなチームが元プロ野球選手の指導の下で特訓を重ね、精神的・肉体的に強くなっていく姿を描く。


傷害事件で謹慎中の韓国球界の元スター投手・サンナムはろう学校野球部の監督を引き受ける。やる気はあるが気力・体力に劣る選手たちは練習試合で強豪校にボロ負け。サンナムは全国大会を目指すため彼らを徹底的に鍛えあげる。


木製バット、白いスパイク、左利きのキャッチャー、20〜60番台まである背番号、関係者以外の客がいないスタジアム、審判のジャッジに抗議する選手etc…。そもそも野球部がある高校が国内に50校余りしかなく、予選なしで全国大会に出場できるが、その分少数精鋭でろう学校では1勝するのも厳しいレベル。しかも韓国の高校球児はプロ意識が植え付けられているのか、勝利に対して貪欲だ。もはや風物詩となった夏の甲子園とはほど遠い、韓国の高校野球に対する考え方が非常に興味深かった。


◆以下 結末に触れています◆


物語は、サンナムが野球を通じて少年たちに挑戦する気持ちの大切さ、仲間を慮る心、そして何より野球の楽しさを伝える一方で、彼自身の人生も見直していく手あかのついたモノながら、女性教師とのテンポの良い会話のキャッチボールなどを交えて、努力・根性・友情だけではない高校野球の世界の構築に成功している。ただ、海でトレーニングするシーンは納得いかない。海水につかるとグローブやボールは使い物にならなくなるはずだが。。。