こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イースターラビットのキャンディ工場

otello2011-07-28

イースターラビットのキャンディ工場 HOP


ポイント ★★*
監督 ティム・ヒル
出演
ナンバー 179
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


将来を決められた若者は、夢を実現するために冒険の旅に出る。不運を他人のせいにばかりしている青年は、なんのスキルもないまま家族の元から追い払われる。孤独な2人は、ひとりより友人の助けを借りたほうが、人生に劇的な変化が起きることを知る。精細に描かれたウサギやヒヨコ、鮮やかなパステル色に彩られたキャンディ工場、それらのCGは人の目が知覚できない情報まで再現したハイパーリアルな映像となって、見る者を楽しませてくれる。


父からイースターラビットの後継者に指名されたイービーは、ドラマーになりたいとハリウッドにやってくる。ニートのフレッドは一人前になれと両親に一人暮らしを勧められる。街で出会った2人はフレッドが留守番をする豪邸で共同生活を始める。


未来を選択できない不自由さと、選択肢がありすぎて選べない不甲斐なさ。イービーのように生き方を押しつけられると反抗的になるのは当然だが、フレッドのように、何をやってもいいというのは何もできない人間を生むのも確か。彼らに共通するのは父親とのコミュニケーション不足、父は息子の気持ちを何も理解せずに己の価値観でしかものを見ない。特にフレッドの父は放任をリベラルと勘違いしていたのだろう、フレッドに社会に出て働く大変さをまったく教えていなかったのではないか。


◆以下 結末に触れています◆


イービーはオーディションションに合格しTV出演のチャンスを得る。ところが、せっかくつかみかけたプロへの手がかりをフレッドのために捨ててしまう。一方でキャンディ工場ではヒヨコたちが謀反を起こし、イースターラビットの地位を奪おうとする。そのあたりの展開は子供向けで強引だが、それでもイービーとフレッドはお互いに自分を犠牲にして、相手の願いを叶えようとする。日常に流されて生きるよりゴール目指して戦う、そんな語りつくされた物語ながら、イービーの少し拗ねたキャラやフレッドのダメ男ぶりに共感できる作品だった。