こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

インシディアス

otello2011-08-04

インシディアス Insidious

ポイント ★★*
監督 ジェームズ・ワン
出演 パトリック・ウィルソン/ローズ・バーン/タイ・シンプキンス
ナンバー 185
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


仰々しいタイトルバックと神経を逆なでする弦楽器の高音という古典スリラー的オープニングは、懐かしさが湧くほどスタイリッシュ。観客が嫌悪感を覚え、ハッと息をのみ、背筋を凍らせるにはどういう映像とサウンドが効果的かをよく知っている演出だ。映画は人間ではない「何か」に狙われた少年と家族が遭遇する不可解な出来事を軸に、悪意に目を付けられた人々の恐怖を描く。音や気配だけでなく、あえて姿をさらすことで怨念の強さを表現する悪霊たちのおどろおどろしさ、ダースモール顔をした悪魔、彼らを追い払おうとする霊媒師。それらのキャラクターはありふれているが、魂が抜けた肉体を悪霊が奪い合う発想が新しい。


新居に引っ越したジョシュとルネ夫婦の身辺に不審音が聞こえ始める。ある日、長男のダルトンが屋根裏部屋で梯子から落ちて昏睡状態になり、その後も赤ちゃん用モニターから不気味な声が聞こえ、一家はまた引っ越していく。


引っ越し先でも怪現象は収まらず、ルネはより具体的な人の形をした「何か」を目撃する。そこでゴーストバスターズを呼ぶのだが、彼らの装備が意外に近代的なのが笑わせてくれる。悪霊がドアを動かしたり音を出したりと物理的にエネルギーを発しているわけだから、計器に何らかの反応があるのは当然で、それを計測して分析、解決法を探るのは非常に合理的。心霊現象を数値でとらえ科学の力で対処するのだ。だが、彼らは同時に胡散臭さも漂わせているところがリアルだった。


◆以下 結末に触れています◆


やがて除霊師が悪魔払いを始めるが、元々ダルトンには幽体離脱の能力があり、離脱中に魂が肉体に戻れなくなって、彼の肉体を悪霊や悪魔が狙っている設定は、少しややこしいけれど新鮮さを感じた。そして迷子になったダルトンの魂を、同じく肉体を離れたジョシュの魂が探しに行く父子の愛情を盛り込み、ホラーとしては異色の精彩を放っていた。と、思わせておいて、最後にはやはり王道に戻るあたりにも好感が持てた。