こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

メカニック 

otello2011-08-16

メカニック THE MECHANIC

ポイント ★★*
監督 サイモン・ウェスト
出演 ジェイソン・ステイサム/ベン・フォスター/ドナルド・サザーランド/トニー・ゴールドウィン/ジェームズ・ローガン
ナンバー 193
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


周到な準備と逃走経路の確保、暗殺を完璧に遂行するためには必要不可欠なプロセスだ。主人公はターゲットを徹底的に調査した資料を元に計画を立て、精密機械のごとき正確さで実行する殺し屋。ジェイソン・ステイサムが鍛え上げられた肉体を誇示しつつリアルな暴力を見せる。そんな殺し屋がふとしたきっかけで弟子を取り、2人の関係を中心に息詰まるアクションを展開する。そして弟子に隠していた秘密がいつ露見するかという緊張を常にはらんだ映像は、破壊と銃撃のバイオレンスの中で殺すことでしか生きていけない男たちの悲哀と虚無が濃厚に凝縮されていた。


組織を裏切った上司・ハリーを始末したアーサーは、自暴自棄になっていたハリーの息子・スティーブの面倒を見るハメになる。アーサーはスティーブに銃器の扱いを教え、パートナーとして教育していく。


水死、絞殺、窒息死。。。アーサーは持てる技術を駆使してターゲットを事故死もしくは彼の仕業でないような死に方に偽装する。そこには一切の感情は介在せず、用心深さこそが彼を一流と言わしめている証。一方スティーブは最初の仕事で巨漢相手に派手な格闘を演じるなど、内側の怒りを抑制できないまま。暗殺者の技量には差がありそれを埋めようとするが、2人の間に師匠と弟子の繋がり以上の思いが芽生えたりしない。彼らの関わり方が、この道を選んだ者の掟なのだろう。そのあたり、友情や愛などのウエットな方向に走らず心地よい。


◆以下 結末に触れています◆


やがて、ハリー殺しは自分が嵌められた結果と知ったアーサーは組織に対して反撃を試みる。当然、スティーブも巻き添えを食うがアーサーの機転で切り抜ける。その際、スティーブはアーサーが父の仇と気づくのだが、スティーブに知られてしまったのをアーサーも逆に察する。ここでスティーブはアーサーを問い質したりしないし、アーサーも下手な言い訳をしない。2人の逡巡や葛藤を省き、あくまで生きるか死ぬかのドライな選択を迫る割り切り方がかえって潔かった。