こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ライフ -いのちをつなぐ物語-

otello2011-09-05

ライフ -いのちをつなぐ物語-


ポイント ★★★
監督 マイケル・ガントン/ マーサ・ホームズ
出演
ナンバー 212
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


生きるというのは、生き残り子孫を残すこと。強いものが弱いものを襲って食料にする厳然たるルールがある一方、弱者もまた身を守るために様々な知恵を絞り、数世代にわたって継承するうちに進化していく。あるものは天敵がいない環境に適応して特異な形質を獲得し、あるものは個体が群れをなし遺伝子を残す確率を上げようとする。偶然撮影できたスクープもあるだろう、数週間も粘ったのち空振りだった企画もあるだろう。動物たち日々の営みの決定的瞬間をとらえるまでに費やされた膨大な時間と最新技術の結晶ともいえる映像の数々は、まさに驚異の世界だ。


他に一切の動物がいない南極の雪原で出産・子育てをするアザラシに始まり、高山地帯、乾燥地帯、熱帯のジャングル、大海原、絶海の孤島といまだ開発の手が入らない豊かな自然の中で、昆虫から大型動物まで様々な捕食と生殖の実相を紹介していく。


4匹しかいないオタマジャクシを木の上で育てるカエルや、植物の葉を切り取って地下の巣の中に運びキノコを育てて食料にしているアリの高度な社会生活、峻険な崖に生息するアイベックスなど、その場所でしか暮らせない動物たちはむしろ進化の袋小路に迷い込んだよう。それらは科学などでは到底想像が及ばない“大いなる意思”が働いているとしか思えない光景。神の御業などと言うと陳腐になってしまうが、やはりある種の神秘を感じずにはいられない。


◆以下 結末に触れています◆


石でヤシの実を割るサルは、道具を使う意味でヒトの祖先を象徴している。石をヤシの実にぶつける場面のスローモーションは、「2001年」の動物の大腿骨を振り下ろす原人そのもの。我々もほんの数十万年前までは動物の中の一種に過ぎず、現在の繁栄は無数の試行錯誤の産物に過ぎない事実をこのシーンは教えてくれる。地球は、そこで命を授かった生物すべてのもの、彼らには彼らの一生があって、人間が介入してはいけない。そんなメッセージが強烈に伝わってくる作品だった。