こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー

otello2011-09-09

キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー
Captain America:The First Avenger

ポイント ★★★
監督 ジョー・ジョンストン
出演 クリス・エヴァンス/サミュエル・L・ジャクソン/ドミニク・クーパー/ヒューゴ・ウィーヴィング/トビー・ジョーンズ/スタンリー・トゥッチ
ナンバー 208
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


チンピラにいくら殴られても臆せず立ち向かい、手榴弾から仲間を守ろうと身を投げ出す。ひ弱な体に宿った善なる心は決して暴力に屈することなく、自己犠牲も厭わない。そんな主人公が肉体を改造され、己が手に入れた驚異的なポテンシャルに愕然とする場面が印象的だ。願っても叶わないとあきらめていたパワーが現実のものとなって正義を行使するために使えると知り、恐れと希望が入り混じった表情をみせるのだ。“米国の正義”が絶対的に信じられていた時代、若者たちが何の疑いもなく戦場を志す勇ましくも晴れやかな姿がかえって恐ろしい。


第二次大戦中、虚弱体質ゆえに徴兵基準に満たないスティーブは、アースキン博士に根性を買われて特殊部隊に採用される。スティーブは厳しい訓練に脱落しそうになるが、彼の良心を評価した博士によって身体能力を増強される。


敵スパイを倒し子供を救ったのをきっかけにスティーブは一躍ヒーローとなり、キャプテン・アメリカとして戦時国債募集キャンペーンに駆り出される。その際の女性ダンサーと共演するステージは全盛期のミュージカルを見ている気分。キャプテン・アメリカの武器が丸いシールドという地味さだけに、華やかさが際立っている。その後、イタリア戦線を慰問したキャプテン・アメリカは、捕虜となった友人を救うべく単身敵地に乗り込み、レーザー兵器を開発し自らの軍団を率いて世界制覇を目論むシュミットから米兵を救いだす。そして、シュミットが持つ兵器工場を次々と破壊していくが、シールドをフリスビーのように投げるなど、まったく新しい戦闘シーンに手に汗握る。


◆以下 結末に触れています◆


悪はあくまで歪んだ精神を外見に反映させ、善は見た目りりしくたくましい。善悪の彼我がはっきりと分かれていたからこそスーパーヒーローが望まれ、生みだされる。この壮大なプロローグでは、キャプテン・アメリカは自分の存在に疑問を抱いたりはしない。だが、70年の眠りから覚めて蘇った時、混迷する21世紀に彼の価値観はどこまで通用するのか、新たな仲間との今後の展開が楽しみだ。