こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

モテキ

otello2011-09-26

モテキ

ポイント ★★★★
監督 大根仁
出演 森山未來/長澤まさみ/麻生久美子/仲里依紗/真木よう子
ナンバー 228
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ネットで知り合ったチョーかわいい子と朝まで飲み明かして、気が付けばキスまでしている。もしかしたら付き合ってくれるかもしれない、そんな恋の始まりの時期の、世界の中心にいるような全能感と明るい未来への喜びをポップなダンスで表現するシーンは、まさに映画ならではのスペクタクル。自分がハッピーなだけでなく、道行く人々もみな幸せを祝福してくれる幻想が、Perfumeまで巻き込んだ見事なミュージカルシーンに昇華されていた。恋愛に縁のないまま30歳を超えてしまった男が就職を機に突然モテ出すが、生来のネガティブ思考故その事実を受け止められずに悶々とする様は、コミカルに誇張はされていても心情は非常にリアルだ。


サブカルおたくの幸世はウェブマガジン記者に採用される。ある日ツイッターで意気投合した相手をオフ会に誘うとやってきたのは美人のみゆき、幸世は舞い上がってみゆきを自宅に泊める。幸世はみゆきに気に入られたと思い込み有頂天になる。


モテなかったせいで女心がわからず、女心がわからないからモテないという悪循環にとらわれている幸世は、せっかくみゆきがOKサインを出しているにもかかわらず、ことごとく見送ってしまう。そしてチャンスをフイしたのを後悔し更なる自己嫌悪に陥る。それでもまだ脈はあると期待を捨てない。この、妄想の中では積極的なのに、いざみゆきを前にすると「俺なんてどうせダメ」とあきらめる幸世の態度は、己が傷つきたくないと思うあまりの自己愛にほかならない。


◆以下 結末に触れています◆


一方で、みゆきの友人・るみ子とは肉体関係を持ってしまうが、彼女の愛は重いと交際は拒絶してしまう幸世。惚れてフラれるのには慣れていても、告白され迫られる体験にうまく対処できない。それはきっと、るみ子に同類のにおいをかぎ取ったからだろう。彼女はほしいけれど人生まで背負い込みたくない幸世は21世紀の「結婚できない男」の象徴。しかし最後にはきちん覚悟を決める彼の姿に拍手を送りたくなった。