こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

セカンドバージン

otello2011-09-29

セカンドバージン

ポイント ★★
監督 黒崎博
出演 鈴木京香/長谷川博己/深田恭子
ナンバー 229
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


すべてを失って人生のどん底に突き落とされた男を励まそうとする女。その、元気づけようとする態度が明るいほど、男のプライドは傷つき重荷になっていく。そんな、家庭を持てず仕事一筋に生きてきたヒロインには人の痛みに鈍感で、それが17歳も年下の恋人には耐えられない。映画は年齢の離れたカップルのすれ違いを通じて、世代的な価値観が異なる者同士が愛し合うことの難しさを描く。会社では有能でも男女の機微には疎い中年女の一途な愛が痛々しい。


マレーシアで瀕死の重傷を負った行のベッドに付き添って、るいは献身的に面倒をみる。ふたりには同棲していた過去があるが、行が有罪判決を受けて怪しげなチャイナファンドに手を出して以降、日本から姿を消していた。


るいは辣腕編集者、行はネット証券会の寵児、ふたりは行の本の出版を通じて急接近する。初めのうち、るいが何度も行の誘いを断るのは、彼女が恋愛に対して臆病になっているからだろう。忘れていた感覚とからかわれているのではという不安、一方で若い男からストレートに言い寄られて悪い気はしない。ときめきとためらい、そのあたりの恋に悩むるいの表情は美しい。だが、編集者としてのるいの存在感はかなり無理があり、「顰蹙はお金を出してでも買う」とか「石橋は叩き壊してから渡れ」などの某出版社社長の言葉を口にする場面は、取ってつけたような不自然さだった。


◆以下 結末に触れています◆


やがて行は傷の回復と共に少しずつるいに心を開いていく。その間、行の妻が現地に現れたり、るいが行の足跡を訪ね歩いたりするが、基本的にベッドに横たわったままの行と介抱するるいのストーリーは動きが乏しく内容も散漫。物語のテンポがのろくぬる〜い作りに思えるのは原作のTVドラマを見ていないせいか。もっと性的にもアクション的にも過激なシーンを挿入してエピソードを作り込むなどして、カネを払って映画館にまで見に来た客に対する敬意を示してほしかった。