こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

猿の惑星:創世記

otello2011-10-11

猿の惑星:創世記 RISE OF THE PLANET OF THE APES

ポイント ★★★*
監督 ルパート・ワイアット
出演 ジェームズ・フランコ/フリーダ・ピント/ジョン・リスゴー/アンディ・サーキス
ナンバー 241
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


テーブルから天井灯に飛び移り手すりを伝って屋根裏部屋に上がる。太い幹を駆け上り枝から枝を渡って大木を登る。それらのシーンは流れるようなワンカットに収められ、めくるめく高揚感と重力から解放された自由を味あわせてくれる。映画は人間並みの知能を与えられたチンパンジーが自我に目覚め、人間への不信が敵意にかわっていく過程を描く。記憶力・洞察力といった知性のほかに愛や友情といった他者を思いやる心を持った類人猿が、不当な扱いに怒り、自らと仲間の尊厳を守るために立ち上がる、その文字通り二本足で背筋を伸ばした立ち姿は、運命を自覚した者だけが備える鋼鉄の意思を体現していた。


アルツハイマー新薬を開発したウィルは臨床試験に使ったチンパンジーが産んだ赤ちゃんを引き取る。シーザーと名付けられたその子は驚異的な学習成果を見せるが、ウィルの父を助けようとして隣人に暴力をふるってしまい霊長類保護施設に収容される。


シーザーはウィルに愛情深く育てられたおかげで、思慮分別や優しさ、正義感といった理性感情まで身に着けている。だからこそ保護センターで類人猿を虐待する飼育係に憤り、法に縛られて彼らに対して無力なウィルにも失望する。やがてシーザーが次第にリーダーとしての頭角を現していくが、オランウータンやゴリラなど異種のボスを手なづけチンパンジーのボスに制裁を加えるなど多数派工作も怠らない。そして頭の悪そうな飼育係とシーザーを対比させることで“人間性”とはいったい何かを問うていく。そのあたり、粗野で卑小な飼育係の存在がシーザーの優位性を印象付けている。


◆以下 結末に触れています◆


常に自分の理解者で味方だったウィルも人間には変わりない。一度目は保護移設で、二度目は国立公園の森で、シーザーは2度ウィルに別れを告げる。それは地球をわがものと振る舞う人間に対する、すべての他の生き物からの絶縁宣言。大木の頂上から町を見つめるシーザーの瞳には、自然から見放された人間は地上の支配者の地位を失うという未来が映っていたに違いない。