こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン

otello2011-10-18

オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン

ポイント ★★★*
監督
出演 ラミン・カリムルー/シエラ・ボーゲス/ヘイドリー・フレイザー
ナンバー 247
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


舞台中央上方にセットされたシャンデリアが覆いをはずされると数百のライトがともり、さながら「未知との遭遇」の宇宙船を思わせる壮大な球体から光が洪水となって会場内に降り注ぐ。普段興行が行われている劇場とはケタ違いのキャパシティを誇るロイヤル・アルバート・ホールでの特別公演。会場に詰めかけた万単位のファンに対する視覚的サービスと美しくも哀しい旋律は、いきなりこの切ないミュージカルの世界にいざなってくれる。映画は、「オペラ座の怪人」25周年記念公演を、遠景・アップ・ステージの脇や直下などに配置したカメラを縦横無尽に動かし、躍動感あふれる映像は物語を立体的にとらえるのに成功している。


パリ・オペラ座、コーラスガールのクリスティーヌはプリマドンナの代役を見事に務め、幼なじみのラウルとも再会、喜びに浸る。しかし、劇場を陰で支配する怪人に呼び出され地下深い彼の居室に連れて行かれる。その後怪人は、新作の主役をクリスティーヌにしろと劇場を脅迫、聞き入れられないと知ると災難を引き起こす。


オーケストラピットを舞台後方に設えたおかげでステージが大きく広がりを持ち、劇中のオペラや仮面舞踏会といった場面がよりスペクタクルとなって圧倒的な臨場感を醸し出す。もちろん、会場で見るのとは違って、その場の熱気や全体を包み込むボルテージはスクリーンからは伝わってこない。それでもカメラが俳優たちの表情を間近で追ったおかげで、この映画の観客は、少なくともステージが見づらい両脇やはるかに離れたアリーナ3階席の観客よりはきちんと音楽と芝居を堪能できるはずだ。


◆以下 結末に触れています◆


そして、怪人が仮面だけを残して姿を消すラストシーンの後、作曲家のアンドリュー・ロイド=ウェバーによる挨拶、サラ・ブライトマンと歴代怪人を演じた俳優たちとの合唱などで満場のファンの思い出にページを刻んでいく。世紀をまたいで人々に愛され続けるこの作品が不朽の名作としての地位を確立し、数十年・数百年を経た後世まで語り継がれていくことが約束されているようだった。