こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

指輪をはめたい

otello2011-11-10

指輪をはめたい

ポイント ★★*
監督 岩田ユキ
出演 山田孝之/小西真奈美/真木よう子/池脇千鶴/二階堂ふみ
ナンバー 224
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


気がつくと3人の女が婚約者になっている。美しく頭脳も明晰な完璧な同僚、セクシーでさばさばした性格の風俗嬢、古風で尽くすタイプだがずれている人形劇師。それぞれに魅力を感じつつも、誰が本物の婚約者か見当がつかない。映画はそんな主人公の幸せな災難をコミカルに描く。なくした記憶を取り戻すために彼女たちと愛を確認していく姿は、まさに彼自身の自分探し。その過程で、1人を選べない心の弱さが露呈していく。決められないのは逃げているだけ、結婚を目の前にした男の、「この女でいいのか」の気持ちがリアルだ。


営業先のスケートリンクで頭を打った輝彦は、恋人のデータをすっぽり忘れてしまう。さらにかばんから婚約指輪が見つかり、我こそ婚約者と名乗る女が3人現れる。まったくわけのわからない輝彦は、スケートリンクで出会った謎の少女・エミに相談する。


3人の女はある意味、男の理想像ともいえる存在。ただ、その中から1人に絞るとなるとみなどこか物足りず、踏ん切りがつかない。3人との日替わりデートは楽しいはずなのに、結婚という現実が重くのしかかってくると途端に憂欝なものになっていく。それでも結論をズルズル先延ばしにする輝彦には、もはやモテモテのうらやましさより、悲壮感を覚える。あり得ない設定ながら、非常にファンタジックな映像が独特の世界観を作り上げ、輝彦の逡巡を明るい苦悩に変えている。


◆以下 結末に触れています◆


そして、スケートリンクを優雅に滑る少女たちが輝彦のトラウマを蘇らせる。あれほど愛し合ったエミが突然輝彦のもとを去ったのは、家族になる責任を伴わない気楽な同棲生活を続けていたい輝彦に愛想を尽かしたから。すべては彼の煮え切らない態度が原因なのだ。この物語に登場する女たちは、輝彦にもてあそばれた被害者なのに、皆輝彦に優しい。それは彼の人徳だろうか、そのあたりの彼のキャラをもう少し描いてほしかった。