こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シェアハウス

otello2011-11-15

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ポイント ★★
監督 喜多一郎
出演 吉行和子/佐伯めぐみ/浅田美代子/木野花/牧田哲也 /三上真史/大杉漣/榎木孝明
ナンバー 271
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


広々とした吹き抜け、会話が弾む楽しい食卓、パーティに息抜きにたびたび利用される見晴らしのいいバルコニー、そして何よりお互いを思いやる友情以上愛情未満・男子禁制の心地よい他人との距離感。寡婦、離婚、恋愛下手、挫折など様々な理由でひとりっきりになった女たちが、孤独を癒すために一つ屋根の下で同居を始める。干渉しすぎないようにしているつもりでもいつしか家族のように心配になっていく、その気持ちの変化が温かい。しかし、ここで描かれているのはあくまでそんな共同生活の良い面を強調したきれいごと。高齢化社会の理想像を示したいのならば、せめて空の青さや芝生の緑、木のぬくもりが感じられる鮮やかな映像で見せてほしかった。


古い木造家屋で一人住む老婆・有希子は友人の死をきっかけにカフェ仲間の麗子・英恵、東京から来たまひると一緒に暮らすことを決意、シェアハウスを完成させる。


有希子以外の3人も事情があって男と縁がないが、女4人力を合わせて生きていこうとする。それぞれが新しい人生をスタートする過程で、己の中に新しい可能性を発見していく。だが、彼女たちの大人のままごとは本来充足感や安心感に満ちているはずなのに、その素晴らしさは伝わってこず、かといってハウスシェアにおける実用的な情報もない。そもそも土地や建物の資金はどこから捻出したのか、日常の生活費や労働の分担などの細かいルール決めはどうやったのか。そこをもっと掘り下げて少しはリアリティを持たせなければ、絵に描いた餅にしか見えない。


◆以下 結末に触れています◆


やがて有希子が体調を崩し、末期がんと診断される。入院するよりはシェアハウスで最期を迎えたい彼女に周囲も好意的。ここでも疑似母娘的人間関係に発展していたまひるが献身的に介護するわけでもなく、ただ見守るばかり。もしもの時に頼れるのは遠くの肉親よりも近くの友人というのは理解できたが。。。