こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密

otello2011-11-18

タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密
THE ADVENTURES OF TINTIN: THE SECRET OF THE UNICORN

ポイント ★★★
監督 スティーヴン・スピルバーグ
出演 ジェイミー・ベル/アンディ・サーキス/ダニエル・クレイグ/サイモン・ペッグ/ニック・フロスト
ナンバー 265
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ちりばめられた財宝への手がかりは謎に満ち、容赦なく襲いかかってくる敵は何度撃退してもまた姿を現し、目くるめくカメラワークは疾走するバイクのスピード感と飛行機が空中を舞う浮遊感を味あわせる。映画は、息もつかせぬ展開で観客の目を釘付けにしようとする「レイダーズ」シリーズで徹底的に追及してきた冒険活劇の神髄を、洗練された表現技術でスクリーンによみがえらせる。デジタル合成でハイパーリアルに再現された小道具や背景は実物以上の質感を持ち、登場人物の所作や感情もより細かい筋肉の動きで見せ、人間の目では処理しきれないほどの膨大な情報量。これはもはや映画とは違う次元の映像というべきだろう。


記者のタンタンは帆船の模型を露店で買うが、それに隠されていた財宝のありかが記された羊皮紙のメッセージを見つけていたために、財宝を追うサッカリンという男に拉致される。貨物船に移送されたタンタンは縛めを解き軟禁されていたハドック船長と知り合う。


タンタンとハドックはサッカリンより先に3つ目のメッセージを手に入れようとするが、当然サッカリンの執拗な追撃を受け、そのたびに機転を利かせて危機を切り抜ける。貨物船からの脱出、飛行機での逃避と不時着、そして軍船と海賊船の壮絶な海戦の記憶など壮大なスケールで描かれたシーンには圧倒されるばかりだ。さらにモロッコを舞台にした大追跡劇はスピルバーグ作品のエッセンスがすべて凝縮され、3Dへの変換が体感型ゲーム機のシュミレーターに乗っている気分にさせてくれる。


◆以下 結末に触れています◆


ただ、内容はあくまで子供向けで、人物造形は深くはない。特にアルコール依存症のハドックは、アホなミスを連発したかと思うと目を見張る大活躍もする。時に相棒として助言・助力したりするが、全体に信用が置けずむしろタンタンの足を引っ張っている。そのあたりの人間的な弱さがどこに起因するのか、もう少し掘り下げ手入れば魅力的なキャラクターに見えたのかもしれないが。。。