こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

50/50 フィフティ・フィフティ

otello2011-11-19

50/50 フィフティ・フィフティ

ポイント ★★★*
監督 ジョナサン・レヴィン
出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット/セス・ローゲン/アナ・ケンドリック/ブライス・ダラス・ハワード/アンジェリカ・ヒューストン
ナンバー 275
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


5年後生存率が50%なのに、実感がわかずどこか他人事のよう。母親は過剰に干渉し、恋人は逃げ出してしまっても、対応に追われる自分を別の自分が観察しているかのごとき距離感が心地よい。そんな、いつもはにかんだ笑顔で感情をコントロールし、なるべく周囲に迷惑をかけまいと振る舞う主人公の心情が濃やかに描きこまれる。もちろん死ぬのは怖い、だがじたばたする姿を見せるのもみっともない。重篤な病に侵されながらも事実を受け止め、悲壮感を漂わせず淡々と治療を受けていく過程が清々しい。


ラジオ局に勤めるアダムは腰部のガンと診断され、抗ガン剤の点滴を受ける。病院への送り迎えをしてくれていたガールフレンドは去り、親友のカイルとつるんでいるが、徐々に体調が悪化していく。一方で新人セラピスト・キャサリンとの出会いが気分転換になっていく。


病状の進行による体の変化よりも、彼の病気を知った人々の変化にアダムは戸惑う。憐れみを含んだ目で見られたり、必要以上に気を回されたり、特別扱いのせいで居心地悪い思いをする。だが、カイルだけはアダムのガンを利用してナンパしたりするなど、アダムが落ち込まないように笑わせ励ましてくれる。その方がアダムも気が楽で、キャサリンとの頼りにならないセラピーよりよほど気持ちをほぐしてくれたりするのだ。ところがほどなく、ガンは転移し薬では抑えきれなくなっていく。


◆以下 結末に触れています◆


手術の前夜、アダムは初めて苛立ちを爆発させる。死の恐怖に耐えられなくなりクルマを暴走させ泣き叫ぶ。そして、カイルの部屋に行くがそこでマニュアル本を見つけ、カイルこそ一番アダムを心配してくれていたのを知る。無神経なカイルの言動が実は最高の思いやりだったというさりげない友情。やはり持つべきものは友、言い古されたことをさらりとしかししみじみと感じさせる仕掛けは非常に洗練されていた。少し伸びた髪でキャサリンと微笑みを交わす程良く抑制されたラストシーンも、闘病記とは思えない軽やかな印象を残す作品だった。


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